仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「新宿鮫」シリーズ   大沢在昌   [光文社]

大沢氏の出世作となった有名シリーズ
10作目まで出ています。
 
 主人公鮫島は、新宿署所属の刑事。「新宿鮫」というあだ名をもつ一匹狼。出世を約束された
 “キャリア”組でありながら、所轄署の一刑事に留まっているのは、警察組織の大スキャンダルとなる
 過去の出来事の証拠を握っているからだった。
 上層部からの圧力にも屈せず、職務への誇りを捨てることなく、一人で犯罪と闘い続ける鮫島の姿を
 描くハードボイルド小説。
 
 
 
この作品の魅力はまず、主人公鮫島のキャラクターです。
腐敗した警察組織上層部から迫害されている自分の立場にすねることなく
自己の職責を果たし、犯罪に真っ向から立ち向かっていく姿がカッコイイです。
「警察という組織に絶望をしていても、警察官の職務に対しては違う」というスタンスにシビレます。
 
しかし、彼はスーパーマン的人物ではないのですが、そこがまたイイんです。
見た目は強面ではなく、年より若く見えます。
鮫島が一目置くヤクザ真壁が鮫島を評して言ったのは、こんな内容
 「誰が相手であっても絶対にひかない。ケンカがすごく強い訳ではないが、気迫で押し切る」
 
捜査中だった銃製作のプロに逆に捕まって、これ以上屈辱的な殺され方はないという状況に
おちいり、間一髪で上司に助けられますが、その時の鮫島は超然と死を待ってはいません。
恐ろしさにガタガタ震えて泣きべそをかいて助けをこいます。
 私はこの辺りが好きですね~。
無敵のヒーローではなく時にはドジもふむけど、職業的信念に基づき悪に立ち向かっていく姿に
ぐっときます。
恋人 晶の生命の危機に動揺しまくる所も女心をくすぐります。
 
 
ハードボイルド小説として異色なのは恋人 晶(しょう)のキャラクターでしょう。
彼女はロックバンドのボーカルで元不良少女。
気が強くてまっすぐな気性の持ち主。
鮫島に対してもガンガン言いたいことを言います。
私の中でのビジュアルは矢沢あいさんのマンガのNANAです
 
「男性向け」の小説では、女性は類型的に描かれることも多くて
読んでいて冷める所ですが、
大沢作品では女性キャラも個性的にいきいきと描かれていて、そこが魅力です。
晶が巨乳である所はいかにも「男性向け」だなと思いますが(笑)
 
一作目ではインディーズバンドだった晶ですが、シリーズが進むに連れ
メジャーデビューし売れっ子になり、鮫島との距離が開いてしまいます。
途中で鮫島の浮気?があったりもして、どんどん晶の影が薄くなっています。
この先、どうなっちゃうのでしょうか。
 
 
その他、シリーズごとのキャラクターも魅力的です。
数少ない鮫島の理解者の上司桃井やヤクザ真壁、宿命の敵 仙田などなど。
私は「狼花」の凛としたヒロインや「炎蛹」のとぼけた先生などが好きです。
 
 
 
小説としても、一作ごとに趣向が変えられていて
飽きずに読み続けられます。
 
警察組織の実態が詳細に描かれており、かなりリアルであるらしいです。
「キャリア」「ノンキャリア」など問題が多いようです。
「公安」はスパイ部だし。
警察にご縁がない人生を送る私は、フィクションとして距離をもって眺められて
幸せです。