仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

本/フィクション:平成:男性

「下町ロケット ガウディ計画」  池井戸潤   (小学館文庫)

直木賞受賞の「下町ロケット」の続編です。 前作から数年後、 佃製作所はまたピンチに陥ります。 今度の敵は、新興のライバル企業と権力志向の医学部教授です。 「ガウディ」とは、心臓病治療のための医療機器の名前です。 前作同様、楽しめる小説です。 敵…

「向田理髪店」    奥田英朗   (光文社)

北海道の過疎地が舞台の連作短編集 6編収録 北海道の炭鉱都市だった町が舞台 一時期は栄えた町だったが炭鉱が閉鎖されてから さびれる一方で、とうとう財政破綻したという町 主人公 向田康彦は理髪店の店主 妻・母との三人暮らし 娘と息子は就職して家を出…

「我が家のヒミツ」  奥田英朗   (集英社文庫)

「家日和」「我が家の問題」に続く家族小説シリーズ第三弾 シリーズといっても、家族をテーマにした短編集というだけで 三作の中で継続したストーリーは1篇ずつだけです。 奥田氏が作風が多彩で、作品によって全然違いますが このシリーズはもっとも心温ま…

「我が家の問題」   奥田英朗   [集英社]

「家日和」の続編です。 といっても同一テーマ(家庭)の短編集というだけで 一つずつの作品にはつながりはありません。 奥田氏には数少ない心温まる系作品です。 前作よりも時代が変わった世相を反映してか 身につまされる内容が多いです。 「ハズバンド」…

「天地明察」   冲方 丁   [角川書店]

時代小説 2010年 吉川英治新人賞、本屋大賞受賞 江戸時代(四代将軍 家綱~綱吉)の天文学者 渋川春海が主人公 幕府の権力者の依頼を受け、新しい暦の開発とその全国実施を達成するまでの物語 いくつかの楽しみ方が出来る小説です。 時代小説として、江…

「天使の牙」「天使の爪」  大沢在昌     [小学館]

2作のシリーズです。 主人公は女性警察官。 麻薬シンジゲートのボスの脱走した愛人の警護で 追っ手に撃たれて瀕死の重傷。 脳移植により愛人の身体で生き返る、という設定。 荒唐無稽な設定だし、 人物造形にはやや首をひねる所がありますが 主人公の心理の…

「歪笑小説」   東野圭吾   [集英社文庫]

「怪笑小説」「毒笑小説」に続く、ブラックユーモア短編集シリーズ 第4弾 今回は小説・出版業界のパロディという自虐的な内容になっています。 12編収録で、 ・「伝説の男」 売れる作家の原稿を取るためなら、どんなことでもする編集者 ・「小説誌」 小説…

「マスカレード・ホテル」 東野圭吾 [集英社]

ミステリ長編。シリーズ物ではありません。 舞台は東京の一流ホテル 連続殺人事件の次の犯行を防ぐために、刑事がホテルの従業員になって 捜査を行うという設定。 東野氏の最近の新作にはがっかりしていましたが これはおもしろかったです。 とりあえず愛想…

「下町ロケット」  池井戸潤   [小学館]

直木賞を受賞して話題になった作品 主人公 佃は、中小企業佃製作所の社長。宇宙科学開発機構の研究員としてロケットの開発に 携わった経歴を持つ。家業を引き継いだ後も、高度な技術を開発し、業績を伸ばす。 佃製作所が高度な研究・技術を持つことが元で、…

「麒麟の翼」  東野圭吾   [講談社]

加賀恭一郎刑事シリーズ麒麟9作目 「新参者」の次で、ストーリー的には「赤い指」につながっています。 本の帯の作者の言葉には 「加賀シリーズ最高傑作と謳っていることだろうと思います。 その看板に偽りなしと作者からも一言添えておきます。」 とあるの…

「アルバイト探偵(アイ)」シリーズ   大沢在昌   [講談社]

六本木の私立探偵 冴木涼介(さいきりょうすけ)と、その一人息子の高校生 隆(りゅう)が 主人公のアクションミステリー・シリーズ 6冊くらいでていますが、短編が多いです。 ナンパな雰囲気の明るい作品です。 主人公は父子とも女好き、かつモテる。 彼ら…

「新宿鮫」シリーズ   大沢在昌   [光文社]

大沢氏の出世作となった有名シリーズ 10作目まで出ています。 主人公鮫島は、新宿署所属の刑事。「新宿鮫」というあだ名をもつ一匹狼。出世を約束された “キャリア”組でありながら、所轄署の一刑事に留まっているのは、警察組織の大スキャンダルとなる 過…

「新参者」 東野圭吾  [講談社]

加賀恭一郎刑事シリーズ 短編集でもあり長編でもあるという、凝った形式。 殺人事件が起きて、加賀刑事が捜査の過程で出会う人々の 一人ずつを主人公として短編が成り立っています。 一話ずつ進みながら捜査は進展していき、最終話で解決します。 舞台は東京…

「ザ・ジョーカー」シリーズ  大沢在昌    [講談社]

ハードボイルド作家として名高い大沢在昌の、新しめのシリーズ 主人公はジョーカーという名前のトラブル解決屋。 殺人以外ならどんな依頼も引き受ける。着手金は100万円。 六本木裏のとあるバーが彼との連絡場所。 一度引き受けた依頼ならば、けっして依…

「白夜行」  東野圭吾  [集英社]

不幸な生い立ちをした男女が悪の道に走り、他人を陥れてのし上がるが、 最期には悲劇的結末を迎える物語 と、ステレオタイプなまとめ方をしてしまいましたが ぐいぐい読ませる名作です。 私は基本的には心温まるストーリーが好きで 悪人が主人公の話は好んで…

「秘密」 東野圭吾 [文春文庫]

ベストセラーとなり、映画化もされた著者の代表作の一つ 杉田平介の妻:直子と小学6年の娘:藻奈美は帰省中、夜行バスの事故に遭った。 妻は死に、娘だけが奇跡的に助かった。 しかし、生きていたのは娘の体だけで、その精神は妻のものだった・・・ SF的な…

「カッコウの卵は誰のもの」 東野圭吾  [光文社]

スキー選手の父娘の血縁関係をテーマとしたミステリー 主人公緋田宏昌は元スキーのオリンピック選手 18歳の娘の風美もスキー選手として将来を嘱望されている。 父娘の才能の遺伝を研究させてほしいという依頼を 緋田は拒絶する。それには重大な理由があっ…

「白銀ジャック」  東野圭吾  [実業之日本社文庫]

スキー場が舞台の、サスペンス・ミステリー 倉田が索道部(警備)主任を務めるスキー場に脅迫状が届いた。 ゲレンデのどこかに爆発物を埋めた。爆破されたくなければ3千万円を支払え、という内容。 倉田は客の安全のため、すぐにゲレンデを閉鎖し、警察に届…

「ゲームの名は誘拐」   東野圭吾    [光文社]

誘拐犯人の視点で描いたサスペンス・ミステリー 主人公 佐久間は広告会社に勤める敏腕プランナー 日星自動車の大プロジェクトを企画中だったが、葛城副社長の独断により 担当を降ろされる。 やけ酒の酔いの勢いで葛城邸を見に行った佐久間は 家の中から忍び…

「冬至祭」 清水義範    [筑摩書房]

清水義範氏のいつものイメージとは違う、シリアスな現代家族小説 現代社会の問題点がいくつも題材となっています。 戸田直人はテレビ局の報道番組のプロデューサー、やり甲斐をもって仕事に打ち込んでいる。 専業主婦の妻今日子と私立中学に通う息子拓人の三…

「読み違え源氏物語」 清水義範   [文藝春秋]

「源氏物語」の女性キャラクターをモチーフにした短編集、8作収録 夕顔、葵の上、六条御息所、朧月夜、末摘花、源典待、藤壺宮、紫の上 をテーマにそれぞれ1作ずつ書いています。 原作通りのキャラクターとして描いている作品もあれば まったくパロディに…

「黒笑小説」 東野圭吾   [集英社]

「怪笑小説」「毒笑小説」に続く ブラックユーモア短編集です。 今回は、作家や男性がターゲットという自虐的なネタが多く、よりブラック度が高い といえるかもしれません。 「もう一つの助走」 ある文学賞の発表を待つ小説家と編集者達の姿を描いています。…

「卒業 雪月花殺人ゲーム」 東野圭吾

加賀恭一郎刑事のデビュー作です。 といっても、まだ刑事ではなく大学生なのですが。 大学4年生の加賀恭一郎、沙都子、波香、祥子、華江、藤堂、若生の七人は、 高校時代からの友人で全員同じ大学に進み親密な仲間づきあいが続いていた。 卒業を控えた秋、…

渡辺淳一 「失楽園」他

かの有名な不倫小説「失楽園」がブームになったころ、 この本と他の小説いくつかをまとめて読みました。 それで、この方の現代小説は、みな主題は同じなんだなあという結論を出してしまいました。 「結婚というシステムは恋愛の発展、成就にはそぐわない。 …

「流星の絆」 東野圭吾   [講談社]

14年前の殺人事件の謎を解く、長編ミステリー テレビドラマにもなりました。 功一、泰輔、静奈の幼い三兄弟は、夜中洋食屋を営む両親に黙って自宅を抜け出した。 ペルセウス座流星群を見るためだ。流星群は見られずに帰宅し、両親の部屋をのぞいた功一は …

「家族の時代」 清水義範

ユーモラスな家族小説 法事で一族が集合した栗田家。七十七歳になる父草平、母静江との間には三人の子供、 健一郎、加寿子、美津子がいる。三人はそれぞれ結婚しており、二人ずつ子供をもうけている。 静江のいとこ瑞穂は健一郎たちにとって母親代わりと呼べ…

「オリンピックの身代金」 奥田英朗

ハードボイルドな社会派サスペンス、吉川英治文学賞受賞 昭和39年東京オリンピック開催のその年、オリンピックの成功を目指して日本中が沸き立っていた。 競技会場、新幹線、モノレールなど各種施設の建設が突貫工事で進む中、「東京オリンピックの開催を …

「夜明けの街で」  東野圭吾

殺人事件がからみますが、ミステリーというよりは不倫小説と呼びたいですね。 渡部の課に、仲西秋葉が派遣社員としてやってきた。渡部には妻有美子と幼稚園児の娘がいる。 渡部が大学時代の友人と飲んでいた時、偶然秋葉と出会ったことから、二人の秘密の 関…

「スシとニンジャ」 清水義範

ニンジャやブシにあこがれて日本にやってきた、アメリカ中部の青年の日本滞在記 残念ながら今は絶版のようです。(講談社文庫) ジム・ストーニーはアメリカ サウスダコタ州から来た22歳の青年。15歳のころからあこがれ 続けてきた日本を知るための4週…

「嘘をもうひとつだけ」 東野圭吾

加賀恭一郎刑事シリーズ短編集、5編収録 講談社文庫より 「嘘をもう一つだけ」 「冷たい灼熱」 「第二の希望」 「狂った計算」 「友の助言」 短篇で読む加賀刑事も新鮮です。 「嘘をもう一つだけ」 バレエ団のお話。「眠りの森」を思い出しました。 犯人の…