九月の歌 ‘古今和歌集より’
河風のすずしくもあるか うちよする浪ととものや秋はたつらん つらゆき
わがせこが衣のすそを吹き返し うらめづらしき秋のはつかぜ
昨日こそ早苗とりしか いつのまに 稲葉そよぎて秋風のふく
おほかたの秋くるからに わが身こそ悲しきものと思ひ知りぬれ
わがためにくる秋にしもあらなくに 虫の音きけばまづぞ悲しき
白雲にはねうちかはし跳ぶかりのかずさへ見ゆる秋の夜の月
月にればちぢにものこそかなしけれ わが身ひとつの秋にはあらねど 大江千里
山里は秋こそことにわびしけれ 鹿の鳴くねに目をさましつつ
奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿のこゑきく時ぞ 秋はかなしき
秋萩をしがらみふせて鳴く鹿の 目には見えずて音のさやけさ
秋の野におく白露はたまなれや つらぬきかくるくもの糸すぢ 文屋あさやす
みどりなるひとつ草とぞ春はみし 秋は色々の花にぞありける