仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

おりおりのうた

四月の漢詩

春暁 春 眠 不 覚 暁 処 処 聞 啼 鳥 夜 来 風 雨 声 花 落 知 多 少 春眠 暁を覚えず しゅんみん あかつきをおぼえず 処処 啼鳥を聞く しょしょ ていちょうをきく 夜来 風雨の声 やらい ふううのこえ 花落つること 知る多少 はなおつること しるたしょう 春…

三月の漢詩

春望 杜甫 国破山河在 城春草木深 感時花濺涙 恨別鳥驚心 烽火連三月 家書抵萬金 白頭掻更短 渾欲不勝簪 くにやぶれて さんがあり しろはるにして そうもくふかし ときにかんじて はなにもなみだをそそぎ わかれをうらんで とりにもこころをおどろかす ほう…

二月の漢詩

江雪 柳宋元 千山鳥飛絶 萬徑人蹤滅 孤舟蓑笠翁 獨釣寒江雪 千山 鳥飛絶へ 万径 人蹤(じんしょう)滅す 孤舟 蓑笠の翁 独り寒江の雪に釣る すべての山から鳥の飛ぶ姿が絶え あらゆる小道に人の足跡が消えた 小舟が1つ,みのと笠をまとった老人が 寒々とし…

一月の漢詩

偶成 朱熹 少年老い易く 学成り難し 一寸の光陰 軽んず可からず 未だ覚めず池塘 春草の夢 階前の梧葉 已に秋声 ぐうせい しゅき しょうねんおいやすく がくなりがたし いっすんのこういん かろんずべからず いまださめずちとう しゅんそうのゆめ かいぜんの…

十二月の詩

のちのおもひに 立原道造 夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に 水引草に風が立ち 草ひばりのうたひやまない しづまりかへつた午さがりの林道を うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた ――そして私は 見て来たものを 島々を 波を 岬を 日…

十一月の詩

落 葉 松 北 原 白 秋 一 からまつの林を過ぎて、 からまつをしみじみと見き。 からまつはさびしかりけり。 たびゆくはさびしかりけり。 二 からまつの林を出でて、 からまつの林に入りぬ。 からまつの林に入りて、 また細く道はつづけり。 三 からまつの林…

十月の詩

一つのメルヘン 中原中也 秋の夜は、はるかの彼方に、 小石ばかりの、河原があって、 それに陽は、さらさらと さらさらと射しているのでありました。 陽といっても、まるで硅石か何かのようで、 非常な個体の粉末のようで、 さればこそ、さらさらと かすかな…

8月の詩

夏の日の歌 中原中也 青い空は動かない、 雲片(ぎれ)一つあるでない。 夏の真昼の静かには タールの光も清くなる。 夏の空には何かがある、 いぢらしく思はせる何かがある、 焦げて図太い向日葵(ひまはり)が 田舎の駅には咲いてゐる。 上手に子供を育てゆく…

7月の詩

おれはかまきり 工藤直子 おう なつだぜ おれは げんきだぜ あまり ちかよるな おれの こころも かまも どきどきするほど ひかってるぜ おう あついぜ おれは がんばるぜ もえる ひをあびて かまを ふりかざす すがた わくわくするほど きまってるぜ

6月の詩

〔雨ニモマケズ〕 宮澤賢治 雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル 一日ニ玄米四合ト 味噌ト少シノ野菜ヲタベ アラユルコトヲ ジブンヲカンジョウニ入レズニ ヨクミキキ…

5月の詩

道程 高村光太郎 僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちさせた広大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の気魄(きはく)を僕に充たせよ この遠い道程のため この遠い道程のため

4月の詩

春に 谷川俊太郎 この気もちはなんだろう 目に見えないエネルギーの流れが 大地からあしのうらを伝わって ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ 声にならないさけびとなってこみあげる この気もちはなんだろう 枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく よろこびだ しか…

3月の詩

風景 純銀もざいく 山村暮鳥 いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな かすかなるむぎぶえ いちめんのなのはな いちめんのなのはな い…

2月の詩

汚れっちまった悲しみに…… 中原中也 汚れっちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れっちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる 汚れっちまった悲しみは たとえば狐の革裘(かわごろも) 汚れっちまった悲しみは 小雪のかかってちぢこまる 汚れっちま…

一月の詩

雪 三好達治 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。 短いけど これで一つの詩です。 シンプルだけど深い。 名作です。

十二月の句  ‘与謝蕪村の俳句より‘

鍋さげて 淀の小橋を 雪の人 木枯しに あぎとふかるるや 鉤の魚 居眠りて 我にかくれん 冬ごもり 暮れまだき 星のかかやく かれの哉 こがらしや 鐘に小石を 吹き当てる 霜あれて 韮を刈り取る 翁かな 松明ふりて 舟橋わたる 夜の霜 故郷に 一夜は更くる ふと…

十一月の句    ‘与謝蕪村の俳句より‘

手燭して 色失へる 黄菊かな 冬ちかし 時雨の雲も ここよりぞ 待人の 足音遠き 落葉哉 葱買て 枯れ木の中を 帰りけり こがらしや 鐘に小石を 吹き当てる 秋去りて いく日になりぬ 枯れ尾花 ひとり来て 一人を訪ふや 秋のくれ 山暮れて 紅葉の朱を 奪ひけり …

十月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

白萩を 春わかち取る ちぎり哉 中中に ひとりあればぞ 月を友 山の端や 海を離るる 月も今 地下がりに 暮れ行く野辺の 薄哉 うつくしや 野分の後の とうがらし 紀の路にも おりず夜を行く 雁一つ 花守は 野守に劣る けふの月 月見れば なみだに砕く 千々の玉…

9月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

秋来ぬと 合点させたる 嚔かな 子狐の 何にむせけむ 小萩はら 錦する 秋の野末の 案山子哉 梨の園に 人たたずめり 宵の月 月天心 貧しき町を 通りけり 秋雨や 水底の草を 踏みわたる 足もとの 秋の朧や 萩の花 白露や 茨のはりに ひとつづつ 茨野や 夜はうつ…

八月の句     ‘与謝蕪村の俳句より’

掴みとりて 心の闇の ほたる哉 昼がほや すみれの後の ゆかしさよ すずしさを あつめて四つの 山おろし 涼しさや かしこき人の 歩行渉り 我が影を 浅瀬に踏みて すずみかな みな底の 草にこがるる ほたる哉 眉ばかり 出して昼寝の うちわかな 蝉も寝る 頃や…

七月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

明けやすき 夜や稲妻の 鞘走り 戚として 客の絶え間の ぼたん哉 みじか夜の 闇より出でて 大堰川 夕風や 青鷺の 脛をうつ 目にうれし 恋君の扇 真白なる 花いばら 故郷の路に 似たるかな 夜水とる 里人の声や 夏の月 蚊帳つりて 翠微作らん 家の内 夏山や 通…

六月の句    ‘与謝蕪村の俳句より’

さみだれや 名もなき川の おそろしき 花いばら 故郷の路に 似たるかな ででむしの 住はてし宿や うつせ貝 ほととぎす 待ちや都の そらだのめ 更衣 母なん藤原 氏也けり 白がねの 花さく井出の 垣根哉 おちこちに 瀧の音聞く 若葉かな こもり居て 雨うたがふ…

‘日本人もあこがれた隋・唐時代の書’展     書道博物館(鶯谷)

小さい館ですが、ここしかないという希少価値があります。 隋・唐時代はメジャーな書家の時代で、わかりやすい作品が多かったです。 書はもともと苦手な分野で、最初は訳もかわらず見ていましたが 何年も見続けているとなんとなく分かってきました。 それぞ…

五月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

広庭の ぼたんや 天の一方に 若葉して 水白く麦 黄ばみたり 地車の とどろとひびく ぼたんかな 寂として 客の絶え間の ぼたん哉 花いばら 故郷の道に 似たるかな 粽解きて 蘆ふく風の 音聞かん 稲葉殿の 御茶たぶ夜や 時鳥 実ざくらや 立ちよる僧も なかりけ…

四月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

たんぼぼ花咲り 三々五々 五々は黄に 花の春 誰ぞやさくらの 春と呼ぶ 我が宿の うぐひす聞む 野に出て 鶯の啼くや 小さき 口明いて 春風や 堤長うして 家遠し 春草路 三叉に 小径あり 我を迎ふ 春の夜や 宵あけぼのの 其の中に よき人を 宿す小家や おぼろ…

三月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

菜の花や 月は東に 日は西に 衣手は 露の光りや 紙雛 鶯を 雀かと見し それも春 鶯に ひねもす遠し 畑の人 みの虫の 古巣に添ふて 梅二輪 しら梅や 北野〃茶店に すまひ取り 宿の梅 折取るほどに なりにけり つぼみとは なれもしらずよ 蕗の薹 のふれんに 東…

二月の句  ‘与謝蕪村の俳句より’

易水に ねぶか流るる 寒さ哉 大雪と 成りけり関の 戸ざしごろ 古池に 草履沈みて みぞれかな 町はづれ いでや頭巾は 小風呂敷 埋み火や 春に減りゆく 夜やいくつ 寒梅や ほくちにうつる 二三輪 しら梅の かれ木に戻る 月夜哉 沓おとす 音のみ雨の 椿かな 埋…

一月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

我門や 松はふた木を 三の朝 古庭に 鶯啼きぬ 日もすがら 腰ぬけの 妻うつくしき 炬燵哉 冬ごもり 燈下に書すと 書かれたり 冬ごもり 妻にも子に かくれん坊 易水に 葱流るる 寒さ哉 町はづれ いでや頭巾は 小風呂敷 埋火や 物そこなはぬ 比丘比丘尼 埋火や …

十二月の句   ‘松尾芭蕉の俳句より’

みな出て 橋をいただく 霜路哉 寒けれど 二人寝る夜ぞ 頼もしき ねぶか白く 洗ひたてたる さむさ哉 木枯らしに 岩吹きとがる 杉間かな たふとがる 涙やそめて ちる紅葉 花皆枯れて 哀れをこぼす 草の種 旅に病んで 夢は枯れ野を かけめぐる たび寝よし 宿は…

十一月の句   ‘松尾芭蕉の俳句より’

色付くや 豆腐に落ちて 薄紅葉 木の葉散る 桜は軽し 檜笠 里ふりて 柿の木もたぬ 家もなし 手にとらば 消えんなみだぞ あつき秋の霜 枯れ枝に 烏のとまりたるや 秋の暮れ 蛤の ふたみにわかれ 行く秋ぞ こちらむけ 我もさびしき 秋の暮れ 此の道や 行く人な…