「私の百人一首」 白洲正子 [新潮文庫]
子どものころからカルタでおなじみの和歌集でしたが、
この本を読んで新たな視点で楽しむことができました。
百首を一つずつ紹介しているのですが
白洲氏の個人的好みの話というコンセプトで
いわゆる学術書とは違う趣を味わえます。
私にとって一番新鮮だったのは
選者 定家の視点を持てたということ。
定家は百首を選ぶ上で
どういう基準、判断をしていたのか。
どういう時代背景の元で選んでいたのか。
たた、単純に好きなものを並べた
というものではなく
いろいろな事情がからんでいるのです。
和歌の専門家としての
主義主張に関わる部分。
貴族として、政治的配慮の必要な部分。
個人的な人間関係に関わる部分、などなど。
それから、百首を一つの歌集として
捉えることができました。
今まではバラバラの歌が百並んでいるというようにしか
見たことがなかったのですが
一つの作品集として読むことができました。
作成の時代順に配列されているとか
作品番号の偶数奇数(1と2、17と18)で
関連のある作者をペアにしてあるとか
改めてなるほど、と思いました。
白洲氏の他の書物を読んでも思うことですが
芸術や文化というものは、単体としてではなく
このように総合的に享受すべきものなのだと
感じます。