仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「樋口一葉」   [ちくま日本文学全集文庫]

代表作「たけくらべ」のイメージは
マンガ「ガラスの仮面」です

北島マヤの劇団つきかげと、姫川亜弓の劇団オンディーヌが
舞台で競演した作品です。

文章は明治の擬古文なので読みにくいのですが
おかげで大体ストーリーを知っていたので助かりました。

「この場面は、マヤがこんなふうに演じていたなあ」なんて
思い返しながら読みました。



初めて読みましたが名作ですね。
文章が流れるようで美しい。
ただ古典文の素養がないと読み切れないかな~。
 イメージとしては、谷崎潤一郎
一文がやたら長くて切れ目ないけど
意味はわかるしリズム良く美しい、という文章に似てます。

内容的にも優れています。
明治の、吉原遊郭付近の土地柄で、
置屋の娘、寺の息子、下町の商店の息子など
様々な階級が混在する地域ならではの少年少女の社会の様子が
よく伝わってきます。

また思春期で、
みんな同じ子供として暮らしていた時代から大人に一歩踏み出し、
身分や階級の違いといった現実に
直面していく年頃の少年と少女の
微妙な心情が生き生きと描き出されています。





それから、この全集には最後に作者の年譜がついているのですが
そちらも読むと興味深いんです。

明治5年に元 八丁堀同心・現 都庁勤務の父に生まれる。
父は勤め人を辞め、事業を始めるが失敗。
婚約が破談になる。
母妹を養うためにさまざま働き、24歳で肺結核のため死去。

明治維新による社会の激動に翻弄された一市民の典型というか。
しかも、解説を読むと父は元々農民でどさくさにまぎれて
武家階級にまぎれこんだとのこと。



一葉の一生自体が一つの小説になりそうだけど
読んでも楽しくないだろうなあ。