仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

本/明治大正

ちくま日本文学全集文庫、終了

全集をどこまで読破できるか しばらく続けてみましたが ひとまず終わりにしようと思います。 わかったことは 有名な作家、作品はそれなりの理由がある ということ。 やっぱり名の知れた作家の方が おもしろかった、または 読むに耐えられた。 有名な作家なら…

「萩原朔太郎」   [ちくま日本文学全集]

萩原朔太郎は、近代の著名な詩人の一人。 詩(いわゆる口語自由詩)は、西洋的な文学で 日本の伝統的価値観にはなじまなくて 自分には合わないと思っていましたが やっぱりそうです。 「恋愛」という概念は、明治以前の日本にはなかった と聞いたことがあり…

「樋口一葉」   [ちくま日本文学全集文庫]

代表作「たけくらべ」のイメージは マンガ「ガラスの仮面」です 北島マヤの劇団つきかげと、姫川亜弓の劇団オンディーヌが 舞台で競演した作品です。 文章は明治の擬古文なので読みにくいのですが おかげで大体ストーリーを知っていたので助かりました。 「…

「岡本綺堂」    [ちくま日本文学全集文庫]

「半七捕物帳」が有名な時代小説家 初めて読みましたが 元岡っ引きのじいさまが、 明治に入ってから江戸末期の自分の捕り物の回想を 知人に向かって語るという設定なんですね。 そのせいか 臨場感や刺激に欠けるというか 探偵小説にしては、ほや~んとした印…

「泉鏡花」    [ちくま日本文学全集文庫]

「高野聖」は 私の、純文学系官能小説ランキング第二位です。 オカルト風味も加わっているので はまる人にはたまらないでしょう。 ちなみに一位は、谷崎潤一郎の「春琴抄」 こっちはSM風味。 婦系図(おんなけいず)も この人の作品だったんですね。 新派劇…

「中勘助」       [ちくま日本文学全集文庫]

代表作「銀の匙」は好きな作品ですが、 他の作品は読んだことなかったです。 「銀の匙」のイメージから 白樺派的理想主義の叙情派作家だと思っていましたが この一冊でそれを見事に覆されました。 この文庫シリーズは 一人の作家ごとに(主に)短編を集めた…

「太宰 治」     ちくま日本文学全集文庫

年表を見ると、一生の内に 何回、自殺を図ったのかと思いました。 幼い頃から自殺願望を持ち続けていたわけですね。 生育環境に問題があったそうですが。 それにしても 一人で死なないで女性を道連れにするというのは どういう心理なのでしょう。 奥さんも良…

「永井荷風」      [ちくま日本文学全集文庫]

ものの本の解説通りの作風だなあと思いました。 粋とか浪漫とか江戸情緒とか。 私は、現実社会や生活を直視しないタイプの人はダメですね~。 小説はフィクションではあるけれど 現実社会のリアリティの上に立った 創作じゃないとおもしろいと思えないんです…

「菊池寛」   [ちくま日本文学全集文庫]

作家としてより、文芸春秋社の創立者としての方が 日本文学界への影響は大きい人物でしょうか。 芥川賞・直木賞を創設したのだし。 今回初めて読みましたが、 感想を一言でいうと「読みやすい」 スラスラ読み進められました。 文学というより小説。 サラリー…

「川端康成」     [ちくま日本文学全集文庫]

収録作品の選択に驚きました。 「伊豆の踊子」も「雪国」も入っていないんです。 短編が8編で あとは「山の音」という長編が一つだけ。 短編「葬式の名人」は自伝的小説で 川端康成は肉親に縁が薄かったことがわかりました。 「山の音」 私は名前も知らなく…

「志賀直哉」   ちくま日本文学全集文庫

読み進めての第一印象 「なんとなく、イラっとする」 もう少し読み続けて 「この人(作者)、ウザい。」 さらに読みつづけて 「中二病か?」 昔、読んだ時はここまで気に触らなかったんですけどねぇ。 好みじゃないし、 「小説の神様」と呼ばれるほど、偉大…

「谷崎潤一郎」  ちくま日本文学全集文庫

谷崎といえば「春琴抄」です。 何度読んでもすごい。 名作や純文学なんて退屈でつまらないという方に お勧めしたいです。 まあ、教科書には絶対載らないだろうけど。 「友田と松永の話」は 江戸川乱歩の怪奇小説的なおもしろさがあります。 鎖国が解けた明治…

「折口信夫」   ちくま日本文学全集文庫

柳田国男に次ぐ日本民俗学の祖 柳田国男の文章に比べると読みにくいです。 柳田の文章が「民話」なら折口は研究論文という感じ。 有名な「死者の書」は歴史小説と呼ぶのでしょうか。 死した大津皇子の独白から始まるのでびっくりしました。 だから「死者の書…

「正岡子規」     ちくま日本文学全集文庫

明治の俳句・短歌の革新運動の第一人者 司馬遼太郎の「坂の上の雲」のドラマのイメージが強いでしょうか。 この人の散文を読んだのは初めてでしたが なかなか興味深かったです。 10年以上も苦しい闘病生活を続けて、 35歳で早世したということを 頭にい…

「森鴎外」      ちくま日本文学全集文庫

昔から、夏目漱石が好きなので 森鴎外は好きじゃないです。 固定観念にとらわれているのかなという気もしてましたが 今回改めて読んでみて やっぱりそうでした。 【漱石と鴎外の違い】 ・在野(民間):役人(官憲) ・ユーモア感覚 ・エンターテイメント性 …

「寺田寅彦」     ちくま日本文学全集文庫

寺田寅彦は明治の物理学者で、優れた随筆を多く書いた。 夏目漱石の弟子筋。 随筆の内容はさまざまで 専門の科学分野もありますが 文学関連や日常生活における所感など 興味深い文章がいろいろあります。 夏目漱石の講演録などもそうなのですが 明治時代であ…

「柳田國男」   ちくま日本文学全集文庫

民俗学の第一人者 柳田國男 多くの文章を遺していますが 有名なのは 「木綿以前のこと」「遠野物語」 現在、私たちにもっとも身近な布地といえば木綿ですが 意外と歴史は古くない。 麻と絹の方が古いんです。 それでも今は木綿が一番ということは それだけの…

「内田百閒」    ちくま日本文学全集文庫

筑摩書房の文庫シリーズ 「ちくま日本文学全集」 全50巻 日本の近代の著名な作家が手軽に読める良書です。 読破は無理だけど できるだけ読んでみたいです。 大学では日本近代文学専攻でしたが 社会人になってからはあまり読まなくなっていたので 久しぶり…

「坊ちゃん」 夏目漱石

昔読んだことはあるはずですが、あまり印象に残ってなかった作品です。 ふと思い立って読み返してみたら、意外と?おもしろかったです。 東京育ちの単細胞で無鉄砲な若者、「坊ちゃん」が四国のある中学校の先生になるが たった一ヶ月で辞めて帰ってきてしま…

「羅生門・鼻」 芥川龍之介    [新潮文庫]

平安期の説話に材をとった、王朝物 8編を収録 「羅生門」「鼻」「芋粥」「運」「袈裟と盛遠」「邪宗門」「好色」「俊寛」 古典的名作を買う場合、私は新潮文庫を選びます。 活字やレイアウトが格調高くて好きなんです。 注釈もしっかりしてるし、ひものしお…

「銀の匙」 中 勘助  [岩波文庫]

作者の少年時代の思い出を自伝風につづった小説 一般的には有名ではないと思いますが、知る人ぞ知る作品。 夏目漱石が高く評価していたそうです。 東京の元士族の両親の下に生まれた作者は 病弱な生まれつきで、幼いころは溺愛する伯母さんにつきっきりで 育…

「伊豆の踊子」 川端康成

日本人初のノーベル文学賞をとった川端康成の代表的短篇 二十歳の学生である主人公が伊豆を旅行している時に、旅芸人の一座と出会い その一員である踊り子の少女との交流を通して、心境が変化していく姿を描く。 冒頭の文が名文として有名です。 道がつづら…

「文鳥・夢十夜」 夏目漱石

新潮文庫から420円で出ています。 「小品」7編が収録されています。 短編小説と随筆の中間のようなジャンル 「文鳥」「夢十夜」「永日小品」「思い出す事など」「ケーベル先生」「変な音」「手紙」 「夢十夜」 タイトル通り、第一夜から第十夜までの十日…

「春琴抄(しゅんきんしょう)」 谷崎潤一郎

「純文学なんて、退屈でつまらない」とお思いの方にお勧めしたい佳作です。 時代は明治の初め、大阪の裕福な商人の令嬢春琴とその使用人佐助の物語。 春琴は幼いころに視力を失くす。琴・三味線の稽古に通う春琴に佐助がつきそうように なったことから二人の…

「武蔵野」 国木田独歩

国木田独歩(くにきだ どっぽ)は、明治の小説家(詩人、編集者)です。 新潮文庫から460円で出ています。 この本は、独歩の第一短編集で、 「武蔵野」「忘れ得ぬ人々」「たき火」「源叔父」など17作が収録されています。 「武蔵野」 独歩の代表作。名…

「私の個人主義」 夏目漱石

講談社学術文庫で、400円です。 夏目漱石は、講演も名人だったそうです。 この本は5つの講演を収録してあります。 ① 道楽と職業 ②現代日本の開花 ③中身と形式 ④ 文芸と道徳 ⑤ 私の個人主義 100年も前の講演でありながら、現代にも立派に通用する論説…

「新潮」一〇〇周年記念ムック「名短編」より  新潮社

森鴎外を初めとして、島崎藤村、芥川龍之介、太宰治、谷崎潤一郎、大江健三郎、瀬戸内寂聴など 日本文学史の年表のような大家の短編三十八作が載っています。 作品は、エッセイや短編小説など様々です。 雑誌掲載当時の原文で掲載されているので 旧仮名遣い…

「蜜柑」  芥川龍之介

「やっぱり芥川は天才だなあ」 と思いました。 文章が素晴らしいですよね ため息がでてしまいます。 何気ない日常の一コマを鋭く観察し、 高度な文章力で芸術的な一編にまとめあげています。 これだけ高度な頭脳労働をしている人は 長生きはできないんだろう…

芥川龍之介

日本文学を何か一つ読んでみよう、 と思う方には芥川龍之介をお薦めします。 なぜかというと ・話が短いから読むのに苦労しない。 ・文章が平明で理解しやすい。 ・ストーリーがシンプルでわかりやすい。 ・なおかつ深い意味が作品に込められているので、読…