仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「海音寺潮五郎」       [ちくま日本文学全集文庫]

歴史小説で著名な作家ですが

私の感想は
「女性蔑視にむかつく

本人としては差別的な考え方という意識はなく、
素で言ってることなのでしょうけど。

まあ、昭和の人で
今とは社会情勢や価値観も違うけど。
でも昔の人の本なんていくらも読んできたけど
こんなにむかついたことはないぞ。


各作品を読んでいて「ん?」と違和感を感じる所は
あったけど、昔の作品の人権感覚の違いに
いちいち目くじらたてるのもどうかと思い、流してたけど
弓削道鏡」がひどい。

主人公は奈良時代孝謙天皇
女帝で、愛人を作って政治を乱したという人物。

歴史的事実に基づいて書いているとは思うけど
描写がひどい。
国政を乱した悪女として名高い人物はさまざまいて
いろいろな作家の小説にもなってるけど
こんなに女性蔑視な視点で書かれているのは
読んだことないです。

恵美押勝という人物の姫が
盲目の鑑真和尚に「千人の男と供臥しされる相がある」という鑑定をされた。
そして押勝が攻め滅ぼされた後、姫は敵兵千人から暴行された。
そのエピソードを「いぶかしいが、おもしろい話だから一応書いておく」と言っています。
ここで「おもしろい」という語彙を使う所が許せないんです。






女性の存在感は薄く
女性は司馬氏の視界に入っていないんだなあ
と感じますが
歴史的にみれば表舞台に女性が立つことは少なかったのは事実だし
作家の世界観なのだからいいと思います。

昨今のNHK大河ドラマのように
女子供受けねらいのメロドラマ的演出の方がうんざりします。



池波正太郎の時代小説の女性キャラクターは
類型的で
「女とはこんなもの」という固定観念で描かれています。
でも、池波氏の女性への愛情が感じられるので
楽しんで読めます。




やっぱり国民的作家と
そうではない作家には
明確な違いがあるものなんですね。