仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

本/フィクション:昭和

「林芙美子」   [ちくま日本文学全集文庫]

男性遍歴で有名な女性作家。 この人も不遇な生まれで、 「生育環境は人間を左右する」系の作家だな~ というのが感想。 読んでいて 職場の、ろくに仕事にせず 家庭の問題を愚痴ってばかりいる おばちゃんの駄話を聞き流しながら うんざりしている ような気持…

「寺山修司」   [ちくま日本文学全集文庫]

人間にとって生育環境は重要だ というのが感想。 この全集は巻末に著作者の年譜が載っていますが、 最初の項目(誕生)の次に成人後の履歴がぽんと来ている人と 誕生から成人までの履歴が細かく載っている人がいます。 細かく載っているのは、作品を理解する…

「織田作之助」    [ちくま日本文学全集]

「夫婦善哉」が代表作 おもしろさがわからなかったです。 各作品に通じる主題があるだろうことは 感じられましたが。 「人情」とかそういうもの? 純文学と通俗小説の違いかなあと思いました。 同時代の文化や風俗を知っている読者なら おもしろい作品だけど…

「木山捷平」      [ちくま日本文学全集文庫]

初めて名前を知る作家でしたが、けっこう良かったです。 「おじいさんの綴り方」 中 勘助の「銀の匙」を連想しました。 「銀の匙」が町方の少年視点だとしたら これは、山あいの村のおじいさん視点というか。 まんが日本昔話的ほのぼの感があります。 俳句が…

「尾崎翠」    [ちくま日本文学全集]

う~ん、何と定義づけたものでしょうか。 カテゴライズできない。 いかにも女性的という作風ではないが なんとなく女性っぽい感じはする。 読む値打ちがないほど低劣でもなく、 カンにさわって不愉快ということもない。 文章も普通に理解できるし ストーリー…

「江戸川乱歩」    [ちくま日本文学全集]

小学校の図書室で 「少年探偵団」シリーズを借りまくったことを思い出します。 久しぶりに読んだら 谷崎潤一郎と共通するものがあるんだなあ と思いました。 偏った性的嗜好者である所が。 両方ともフェチ物なんですね。 谷崎は文学で 乱歩は娯楽小説という…

「稲垣足穂」    [ちくま日本文学全集]

やっぱりファンタジー系は苦手です。 現実感のない話には興味が持てなくて。 設定がファンタジーであっても 人間描写がリアルであればいいのですが。 だからハリーポッターは好きです。 「一千一秒物語」はショートショートが集まっている作品で 「星の王子…

「海音寺潮五郎」       [ちくま日本文学全集文庫]

歴史小説で著名な作家ですが 私の感想は 「女性蔑視にむかつく」 本人としては差別的な考え方という意識はなく、 素で言ってることなのでしょうけど。 まあ、昭和の人で 今とは社会情勢や価値観も違うけど。 でも昔の人の本なんていくらも読んできたけど こ…

「福永武彦」      [ちくま日本文学全集]

読みながら 「誰か(複数の作家)を思い出すんだけど・・・」 と物足りない気持ちになりました。 誰かの亜流?みたいな文章というか。 わざとそうしている訳ではないでしょうけど。 比較的印象に残ったのは「深淵」 主人公の男女のモノローグが交互に続く形…

「大岡昇平」    [ちくま日本文学全集文庫]

印象に残ったのは「中原中也の思い出」 中原中也は一番(というか唯一)好きな詩人です。 小説を私小説的な読み方するのは好きではないのですが 詩の場合は作者の人間性と不可分なような気がします。 この文章は、中原中也の人となりを知る上で 参考になりま…

「富士正晴」    [ちくま日本文学全集]

この人も一般的には有名でないと思います。 小説、評論、詩、エッセイなどを書き、絵も描いていたそうです。 兵隊として中国に送られ、終戦後捕虜になった後、帰国。 戦争体験が、その後の創作や思想に影響した作家はいろいろいますが その中でも異色だと思…

「堀辰雄」     [ちくま日本文学全集]

きっと合わないだろうから と読まずにいた作家。 読んでみたら、 予想通りでした。 一言でいうと 「女々しい」 生い立ちが複雑な人で ファザコンとマザコンを併発しているような。 でもさあ、そういうのは せめて20代で卒業してくれい。 「風立ちぬ」は こ…

「色川武大」    [ちくま日本文学全集]

「色川武大、それって誰?」 と思ったら 「麻雀放浪記」の阿佐田哲也のことだったんですね~。 アウトローな人生を送った方のようで 「無頼派」ってこういうのかなあと思いました。 この方も男性に好まれる作家なんでしょうね。 自分を病気と知りつつ 寿命を…

「開高健」   [ちくま日本文学全集文庫]

印象を、一言で言うと「男性的」 男性の作家の作品なら、イコール男性的というものではなくて この方のパーソナリティがそういう特性なのでしょう。 ベトナムの戦場を取材したり、 活動的な方だったそうです。 戦地を取材して実状を世界に伝えるという仕事は…

「大佛次郎」    [ちくま日本文学全集文庫]

昭和の大衆小説作家として有名。 鎌倉縁の作家なので名前は知っていましたが 読むのは初めてでした。 代表作「鞍馬天狗」が幕末の小説だとは知りませんでした。 大人向けの小説で「ですます体」というのはびっくりしました。 「幻燈」は明治維新後の 旧武士…

「中島敦」     [ちくま日本文学全集文庫]

「山月記」が有名です。 高校の国語の教科書に載っていた 中国の、人が虎になる話。 久しぶりに読んだけど やっぱりおもしろいなあ。 この作者は有名な作品がこれだけで 一発屋のイメージでしたが 33歳で亡くなっていたのですね。 中国や東南アジアの方に …

「幸田文」   [ちくま日本文学全集文庫]

明治の作家幸田露伴の娘 幸田文 この方の随筆は今まで何冊か読みました。 父露伴の子供への教育のエピソードが好きです。 しかし、改めてまとめて読んでみると 「重~い」 結婚10年にして離婚して一人娘を連れて 父の元に帰っています。 この方の言い分で…

「情事」 森瑤子  [集英社文庫]

森瑤子さんの作品、読んでみました。 処女作で、すばる文学賞をとった短編です。 フランス文学を連想するような文章です。 私なりにストーリーをまとめると 夫婦関係に倦怠を覚える33歳の女性が 憂さ晴らしに一夏の浮気をして終わる話。 といってしまうと…

「真砂屋(まなごや)お峰」   有吉佐和子   [中公文庫]

舞台は江戸時代後期 真砂屋は材木屋、お峯はその跡継ぎ娘 江戸時代も長くなり、その矛盾が社会に露呈している時期で 武士は窮乏し大商人が贅沢をむさぼっている頃。 真砂屋は、長屋建造のためだけに材木を売るという奇特な店。 お屋敷住まいのお大尽相手には…

「蒼い描点」  松本清張  [新潮文庫]

箱根が舞台の長編ミステリー 清張氏には数少ない甘めの作風で、女性にお勧め。 どこが甘めかというと、探偵役の男女二人のロマンスが 謎解きといっしょに進行していく所。 主人公は、若い女性編集者。 女性作家の原稿取りに行った箱根の温泉で 知人が変死し…

「絢爛たる流離」 松本清張  [文春文庫]

12編収録の連作推理短編集 清張には珍しく、女性にもお勧めしたい作品です。 清張作品はハードボイルドでいかにも男性向けな感じで 娯楽として気楽には読めないのですが この本は珍しくすらすら読めました。 掲載雑誌を見たら「婦人公論」でした。 女性向…

「水の肌」   松本清張   [新潮文庫]

推理小説短編集 「指」「水の肌」「留守宅の事件」「小説3億円事件」「凝視」 の5編を収録 「指」は、玉の輿に乗るために、自分の過去を知る知人を殺害する女の話。 「水の肌」は、まったく自分勝手な理由で、元妻の再婚相手を殺害して元妻の家の庭に埋め…

「流れる」 幸田文

時代は戦後、没落しかかった芸者置屋の内情を、女中の目を通して描いた文学 作者は明治の文学者 幸田露伴の娘。 なるほど日本近代文学の流れをくんでいるなあという長ったらしい文章で、 読み始めた最初は退屈でしたが、慣れると物語に引き込まれていきまし…

「坂の上の雲」  司馬遼太郎

明治当初から日露戦争終結までを描いた長編歴史小説 日露戦争で活躍した秋山好古(騎兵)・真之(海軍参謀)兄弟と、文学者正岡子規を中心として 明治の日本国の時代を描いた大作です。 去年のNHKドラマは名優勢揃いで見応えありました。今年の続編が楽し…

「ビックボートα」   赤川次郎   [光文社]

巨大な工場をまるごと海に浮かべて南米まで運ぶという、海洋冒険ロマン長編 岩中津重工の一営業課員だった一柳(イチリュウ)は、社長中津の命により極秘プロジェクトの長となり、 α(アルファ)と名付けられた巨大な工場を、南米の革命新政権国家へと海上輸送す…

山岡荘八  「頼朝勘定」  講談社

歴史小説の大家 山岡荘八氏の短編集です。11編収録 織田信長の少年期、藤堂高虎の家臣、織田信長の家来になった黒人、沢庵和尚、 徳川家康の父の家臣などが題材になっています。 表題作の「頼朝勘定」は、源頼朝と妻の北条政子のなれそめの物語です。 時代…

「殺人よ、さようなら」 赤川次郎

『殺人よ、こんにちは』の続編です。 前作から3年が経ち、主人公有紀子は16才になっています。 16才の夏、有紀子と母はあの海辺の別荘に再びやってきた。 友だちの聡美が遊びに来て、死んでしまった八重子さんの代わりに直子さんというお手伝いさん が…

「小説日本芸譚」 松本清張 [新潮社]

日本史上の芸術家10人を取り上げ、その人間像を描いた短編集 運慶、世阿弥、千利休、雪舟、古田織部、岩佐又兵衛、小堀遠州、(本阿弥)光悦、写楽、止利仏師 清張氏の現代物ではなく、歴史小説を読んでみました。 日本の伝統美術も好きなので、興味深く読…

「三毛猫ホームズ」シリーズ 赤川次郎

赤川氏の代表作シリーズ 三毛猫が探偵というユニークなミステリー 片山義太郎は警視庁捜査一課の刑事だが、血、高所、女性など苦手なものが多い気の弱い性格。 探偵役の三毛猫ホームズの助手・通訳として、事件を解決する。 片山と同居の妹晴美は気が強く、…

「殺人よ、こんにちは」 赤川次郎

13歳の少女が主人公のサスペンス・ミステリー 有紀子は財産家の一人娘。ある朝父親が亡くなった。病死だということだが、 母が殺したということに有紀子は気付いた。 半年が経ち、有紀子と母親とお手伝いの八重子は例年どおり海辺の別荘に滞在している。 …