仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「ふつうのお寺の歩き方」   広尾晃   [メディアイランド]

今まさに探していた本、
イムリーでした。

内容はタイトルの通り
お寺めぐりの手引き書です。
ただし「ふつうのお寺」の。

有名寺院のガイドブックとは違います。
どこの町にもあるような、ごくふつーのお寺を
お参りしてまわるための案内書です。



寺社めぐり歴も長くなり「初見期間」は終わりにして
もう少しねらいを持って参拝するようにしたいなあ
と思っていました。

本格的な修行(お遍路さんとか)ではなく
研究者的な見方でもなく
もちろん観光でもなく。

この本が一つの指針を示してくれました。



筆者はライターで
仕事でお寺の住職のインタビューシリーズを続けたことから
全国の無名の寺院めぐりが趣味になったそうです。

訪問の目的は、信仰心というのとはちょっと違います。
もちろんお寺に対する敬虔な態度はお持ちですが。

宗教参拝というより、民俗学的視点での全国調査という姿勢
だと思います。

自分の寺社巡りの目的もこれだ!
と思いました。



本の内容は初心者向けで
わかりやすく丁寧です。

[お寺の基礎知識]から始まります。
そもそもお寺とは何か?
それは「仏像を安置して拝むための場所」です。
シンプルに定義づけられて目からウロコでした。

境内や設備の解説から
お寺が置かれている現状まで
よくわかりました。


次に、[お寺めぐりガイド]。
準備、持ち物から
参拝中の心得、事後の学習まで。

参拝中の心得は
広く啓蒙しべきことだと思いました。
常識、良識が低下している昨今なので。


それから[日本におけるお寺の歴史]
国内にお寺は無数にあって
宗派がいろいろあるのは知ってるけど
概括して理解してはいない。

そこも最近興味を持っていたので
わかりやすく解説してくれていてありがたかったです。







わかりやすく丁寧に教えてくれているけれど
「ガイドブック」とは違う。
それは思想や信念というものが背景に感じられるからです。

現代のお寺をとりまく問題点、ひいては日本の社会・文化の現状に対して
さりげなく問題提起しています。




いろいろ学ぶことが多かったです。


日本の歴史における神道と仏教の関係性。
 →区別しなくても実際問題ない、という答えを得ました。

「宗派にこだわらなくてもいいです」というのは
京都のお寺の方々のお言葉だそうです。

歴史の中で、神道、仏教の権勢が変化しているのは
政治的な問題なんですね。

(私の考えでは、
日本の宗教心の底流は、神道八百万の神
その中に仏様もいる、のではないでしょうか)



とはいえ、お寺と神社、日本人にとって
どちらが大きい存在か、漠然と比較すると
お寺の方かなという気がします。

その直接的な理由は
江戸幕府による寺請け制度らしい。
キリスト教禁止のための政策として
全国民にどこかのお寺の信者として
登録することを義務づける制度です。

歴史上のいくつかの要因から
お寺は村役場的機能を併せ持つ時代が
長くあったようです。

筆者が神社ではなく「お寺」にこだわる理由も
そこにあるようです。




そして有名寺院ではなく「ふつうのお寺」にこだわるのは
市井の人々の歴史や暮らしぶりを感じたいから。

また「普通」を見慣れると
有名寺院の文化的価値や歴史の重みが
自然と感じられるようになるそうです。
なるほど。