「禅僧が教える 心がラクになる生き方」 南直哉 (アスコム)
「心を楽にしたい」とおもっておられる方にお勧めします。
今の人生ハッピーだ、という方には必要ないかな。
著者は、社会人経験の後
青森 恐山の住職代理を務めるという人物
宗教者の書かれた人生指南本的な著作はいろいろありますが
この本は現代社会に合わせた具体的な内容で
必要な方にはとても役立つと思います。
今、日本の世の中で流布している一般的な風潮、考え方に対しての
アンチテーゼを述べている感じです。
[4章構成〕
1. あなたが大切にしている「自分」とは何か
2.「夢」や「希望」という重荷を下ろす
3.感情にふりまわされないために
4.死に向かって今日を生きる
最初にキーワード・主題を1ページで短く示し、その後に詳しい説明を述べるという構成なので
わかりやすいです。
キーワードのページだけをぱらぱら見てもひきつけられます。
私が気になったページをいくつかご紹介します。
これらのワードを見て「おおっ!」と思われた方は
ぜひこの本を手に取ってみてほしいです。
「今どき」の考え方が嫌いな私には
腑に落ちること満載の本でした。
「本当の自分になる」という考え方もあり得ません。
一見、なんのとらわれもなく心のままに生きられる、ひとつの理想像のように思われるかもしれません。
しかし、誰が、何を基準に、その自分が「本当」で「ありのまま」だと判定するのでしょうか。
「自己実現して生きる」といった物語からは、降りてもいいのです。
「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を初めて知ったとき、私は思わず笑ってしまいました。
たとえどんなに理不尽で厳しい立場に置かれようが、それを受け入れ、我慢して自己実現に努力せよというのであれば、私から見れば差別的ですらあります。
「思いどおりにしたい」という意味では、ここ数年流行している「物を持たない暮らし」も同じです。
本質を見れば、そういったシンプルすぎる部屋は、ガラクタで溢れるゴミ屋敷と変わりありません。
極端なほどシンプルな暮らしの根本に何があるかと言えば、対象を「思い通りにしたい」という欲望です。
多すぎる友達は心を疲弊させ、精神的な健康を害します。それだけ多くの人間関係を維持しなければならないからです。
ましてやSNSでつながるだけの関係など、一切なくて大丈夫です。そもそも人間関係でみんな疲れているのに、なぜそんなに友達をふやしたいのか。
家庭ではあきらかに、女性のほうに負担がかかっている場合が多いからです。
この状況を変えないまま、女性が言いたいことを言えず我慢する構図があると、その関係は破綻する確率が高まります。事情によって家事・子育ての分担ができないならば、男性(というより、それをしないほう)が黙って譲れるだけ譲るしかありません。
死を受容するためには、自分を開いておかなければなりません。「自分を開く」とは、どういうことか。
要は「もう自分を大切にしない」ことです。そして、損得勘定抜きで「自分のため」ではなく「人のために動いていくことです。
そもそも、60歳を過ぎたら基本的には「もういなくてもいい人」です。