仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「外套 / 鼻」  ゴーゴリ [ロシア]

ニコライ・ゴーゴリは1800年代前半のロシアの小説家
その後のロシア文学に大きな影響を与えた人物
 
この二編は、ロシア文学の名作にしては珍しく短篇です。
芥川龍之介の短篇を連想させます。(芥川の方が後ですが)
 
 
 
 「外套 (ガイトウ)」
 
外套は要するにコートのことです。寒いロシアでは生活必需品ですね。
 
 アカーキイ・アカーキエヴィッチ・バシマチキンは、低い身分の役人で役所の誰からも馬鹿にされるような
 人物。彼の仕事は与えられた文書を清書することで、それ以外の仕事はできないが、喜びをもって仕事に取り 組んでいた。彼の生活は、役所と自宅の往復しかなく趣味や交際などはなかったが、自分の仕事を愛し
 自分のささやかな暮らしに幸せを覚えていた。
 ある時、着古した外套のつくろいを仕立て屋に依頼すると、「その外套はぼろぼろでもはや繕いは効かない。
 新調するしかない」と言われる。収入に余裕のないアカーキイには大事だったが、なんとかやりくりして
 新しい外套を仕立ててもらう。アカーキイの新しい外套は役所の大ニュースとなり、みんなが彼をひやかした。
 とうとう上役から「新しい外套を祝って夜会をするから、来るように」と言われてしまう。
 慣れない社交の場に引っ張り出されたアカーキイはなんとか切り抜けて帰宅の途に向かうが
 追いはぎに遭い、外套を奪われてしまう。
 
おいはぎの逮捕を求めて、警察や有力者の所に必死にたのんで回るアカーキイですが、
まともに取り合ってもらえず叱責され、とうとう寒さと心労のため死んでしまいます。
 その後、ペテルブルグの街には外套を奪い取る幽霊が出没するようになります・・・
 
 
周りから馬鹿にさせながらも、ひがまず忠実に職務を果たす善良な小役人のアカーキイが
新しい外套で初めて職場の注目を集めた直後、外套を奪われ不幸のどん底につきおとされてしまう
辺りの描写に、「文学」の重みを感じます。
 
幽霊アカーキイが復讐を果たす所は迫力です。
 
 
 
 「鼻」
 
 役人コワリョフがある朝目覚めると、彼の顔から鼻が消えていた。
 鼻は独自に行動していたが発見され、やがて彼の顔に戻る。
 
不条理系の小説ですね。
 
 
 
 
 
 
いかにも文学っぽい長々しい文章なので、初めての方はかったるくなるかもしれませんが、
慣れると独特の味を楽しめます。
 
それにしてもロシア文学は長い!
有名な作品は何巻にも及ぶような長編ばかりだし、一つ一つの文章も長々と続くし、
単語のスペルも長いのが多いし、名前も長い。
 
もし原語で聞いたら、ロシア語の発音は巻き舌で濃い音声なので
さらにくどい印象になるかもしれません。
 
 
こういう点を含めてロシア文学の魅力なんだと思いますが
味わうのには時間と体力が必要ですね