仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

小倉百人一首

おそらく、最も有名な 古典和歌集です。
百人一首」でピンとこない方でも、ぼうずめくりのカルタといえば
思い出すのではないでしょうか。
 
 
百人一首とは、百人の歌人の和歌を一首ずつ選んでまとめた
アンソロジー和歌集です。
選んだのは藤原定家という鎌倉時代の大歌人です。
 
選ばれた歌人は、
古くは、天智天皇柿本人麻呂などの万葉歌人から
紀貫之在原業平紫式部清少納言などの平安貴族、
僧正遍照西行法師、寂蓮法師といったお坊さん、
源実朝(鎌倉右大臣)という武士まで
バラエティに富んでいます。
 
どれも素晴らしい歌で
まさに特選和歌集といった趣です。
個人の和歌集などですと、全てが秀歌という訳にはいかず
しょぼい歌が混じっていることもあります。
この和歌集がカルタになって人口に膾炙したことも
うなずけます。
 
 
 
私の家ではお正月に家族でカルタをするのが恒例だったので、
和歌などわからない子供のころから親しんでいました。
意味はわからないけど、ゴロの良い言葉の入った歌を面白がって
となえていたりしました。
兄弟それぞれのお気に入りの札をとりあったりしたものです。
 
ぼうずめくりも楽しみました。
坊主札をひくと自分の持ち札はすべて没収なのですが、
唯一、蝉丸だけはセーフで(頭巾をかぶっているから)ホッとしたものです。
 子供のころを思い出すと懐かしいです。
 
 
 
カルタ取りをすると、
和歌を音読するのを耳で聞きながら
文字札を目で読んで探すことになるので
学習法としても優れています。
 
小さいお子さんの教育法としては
塾に行かせるより、このように家族とふれあいながら
自然に教養を身に付けさせる方が良いと思います。
 
 
 
 
    春過ぎて 夏来にけらし 白妙の   衣ほすてふ 天の香具山   [持統天皇
                キ       シロタエ      コロモ         アマ  カグヤマ
        
       香具山に衣を干す、という夏の風物詩の景色を歌った歌。
       初夏のさわやかな景色が想像されて、女丈夫できっぱりはっきりしていたであろう
       持統天皇のキャラクターに似合う歌だと思います。
       ちなみに元の万葉集では「・・・夏来たるらし・・・・・衣ほしたり・・・・」という歌です。
       ちょこっと言葉を入れ替えて載せるのもアリだったんですね。  
  
 
 
    田子の浦に うち出てみれば 白妙の   富士の高嶺に 雪は降りつつ   [山部赤人
      タゴ   ウラ                シロタエ            タカネ         
        
       海の背後に見える積雪の富士山の姿、という日本的風景の象徴ともいえそうな歌。
       めでたいお正月にぴったりですね。
    
 
 
    花の色は うつりにけりな いたづらに  わが身世にふる ながめせしまに   [小野小町
                                       ミ  ヨ       
        
       長雨に色あせてしまった桜の花に、年をとって美しさの盛りを過ぎた自分を
       重ね合わせて憂う歌。
       何百年経っても女心は変わりませんね
       しかし、歴史上有名な美女にこんなこと言われたら一般人はどうしたらよいのでしょうか。
 
 
 
    天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ  をとめの姿 しばしとどめむ     [僧正遍照
      アマ   カゼ    カヨ   ジ     ト        オトメ            
        
       宮中行事の「五節の舞姫」が題材。十一月の新嘗祭に4,5人の少女が舞を披露する行事。
       舞姫たちがあまりに美しいので、その場にもっととどめておきたいという気持ちを詠んでいる。
       子供のころ好きな歌でした。やっぱり「乙女」の響きがよかったです。
 
 
 
    このたびは ぬさもとりあえず 手向山   紅葉の錦 神のまにまに   [菅原道真
                            タムケヤマ    モミジ  ニシキ          
        
       紅葉の美しい季節、山の紅葉を神様へのお供え物として捧げます
       という歌。
       とても美しい風景の歌なのですが、我が家の兄弟には「かみのまにまに」の響きがウケていました。
 
 
 
    ひさかたの 光のどけき 春の日に   静心なく 花の散るらむ    [紀 友則]
               ヒカリ                  シヅココロ                     
        
       お日様が温かいのどかな日なのに、桜の花が落ち着きなく散っていくなあ。
       日本的美意識の表れた歌ですね。
       ひなたぼっこしたくなります。
 
 
 
 
    人はいさ 心も知らず ふるさとは  花ぞ昔の 香ににほひける    [紀 貫之]
                                       カ   ニオイ            
        
       久しぶりに訪ねた昔の恋人のつれない反応に対しての歌。
       「貴女の気持はわからないけれど、梅の花は昔と同じように匂っています。」
       女遍歴の多い人ならば、こんなふうにスマートに振る舞って欲しいものです。
 
 
    嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は  いかに久しき ものとかは知る   [右代将道綱母
                  ヌ   ヨ    ア    マ          ヒサ          
        
       浮気者の夫に悩む妻が、独り寝の夜の長さを夫に訴えた歌。
       女の恨みは怖いんです。
       当時は一夫多妻制で通い婚だったから、その男女関係は想像しにくいなあ。
 
 
 
    秋風に たなびく雲の 絶え間より   もれ出づる月の 影のさやけさ    [左京大夫顕輔]
                      タ   マ            イ        カゲ            
        
       雲の多い夜、風に流れる雲のすきまから もれ差してくる月の光のすみきった美しさよ
 
 
 
    長からむ 心も知らず 黒髪の   乱れて今朝は ものをこそ思へ     [待賢門院堀河]
           ン          クロカミ                             エ            
        
       貴方と逢った翌朝、貴方に乱された黒髪と同じように私の心はもの思いに乱れています。
       アダルトな恋の歌ですね。
 
 
 
    村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に   霧立ちのぼる 秋の夕暮れ     [寂蓮法師
      ムラサメ   ツユ           マキ                       
        
       時は秋の夕暮れ、場所は常緑樹の林
       にわか雨に濡れた葉がまだかわかないあたりに、霧が白く立ち上ってくる・・・。
       
       東山魁偉の絵を思い出すような光景です。
       「~秋の夕暮れ」で終わる名歌がこれを入れて三つあり
       「三夕の歌」と呼ばれています。
 
 
 
    月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ  わが身一つの 秋にはあらねど     [大江千里
                 
        
       月を見ていると あれこれと悲しく思い出されます。私一人だけの秋ではないのだけど。
 
       秋ってなんとなくもの悲しい季節ですね。自分にひたりきらずツッコミを入れてる所がナイス
       作者は、おおえせんりではありません。おおえのちさと、です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
本当は恋愛の歌の比率がもう少し高いのですが、
私が「恋の情念」とか苦手なもので
選んでないですね。