「ゲームの名は誘拐」 東野圭吾 [光文社]
誘拐犯人の視点で描いたサスペンス・ミステリー
主人公 佐久間は広告会社に勤める敏腕プランナー
日星自動車の大プロジェクトを企画中だったが、葛城副社長の独断により
担当を降ろされる。
やけ酒の酔いの勢いで葛城邸を見に行った佐久間は
家の中から忍び出てきた若い女を見つけ、後をつける。
佐久間は娘に声をかけ、宿泊先を世話する。
娘の名は葛城樹理、葛城の長女(妾腹の娘)だという。
佐久間は樹理と共謀して、偽装誘拐を行い
葛城家から身代金を得る計画を立てる。
佐久間の目的は金銭ではなく、彼のプライドを傷つけた葛城を
誘拐というゲームで打ち負かすことにあった。
樹理は父親への恨みから誘拐に協力する、という設定。
自慢の頭脳を駆使して佐久間は葛城に勝負を挑みます。
誘拐は無事成功し、二人は身代金を手に入れます。
ところが、最後には佐久間にどんでん返しが待っています。
やっぱり東野ミステリーですね。
佐久間も樹理も暖かい家庭で育っていないという点で共通しています。
これも東野作品らしい設定です。
ある頃までの東野作品は、自己肯定感の低い人物が主人公であることが多いです。
当たり前の愛ある家庭で育ったキャラクターは少なくて
心温まらないストーリー展開が当たり前でした。
余計なお世話だけど、作者東野氏の生育歴はどのようなものであったのかと
つい考えてしまいます。
でもある時から心境の変化があったらしく
作風が変わって、心温まる話が増えました。
結婚(再婚?)した後くらいからだったかなあ。