仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「白銀ジャック」  東野圭吾  [実業之日本社文庫]

スキー場が舞台の、サスペンス・ミステリー
 
 倉田が索道部(警備)主任を務めるスキー場に脅迫状が届いた。
 ゲレンデのどこかに爆発物を埋めた。爆破されたくなければ3千万円を支払え、という内容。
 
 倉田は客の安全のため、すぐにゲレンデを閉鎖し、警察に届けることを主張するが
 上司たちは会社の利益を考えてうなづかない。
 犯人の要求をのみ、金を支払うことに決める。
 
 
身代金の受け渡しはゲレンデ内の場所を指定され、受け渡し役は倉田の部下である
トロール隊員が命じられます。
 
受け取る犯人側にも高度なスキー技術が要求される受け渡しポイントです。
金を持って逃げる犯人と追うパトロール隊員の、息つまるデッドヒートが展開されます。
スキーがお好きな方には楽しめる場面だと思います。
 
身代金の受け渡しが終わった後、犯人から新たな連絡が届きます。
また三千万円を支払えというもの。
結局、三回にわたって計1億1千万円が要求されます。
 
 
 
この物語にはもう一つの事件がからんできます。
一年前にスキー中の激突事故により一人の女性が亡くなりました。
その夫と息子がまたこのスキー場にやってきています。
 
倉田は、脅迫事件への責任感や、この父子への思いに苦しみます。
 
 
職業倫理の上にたち、客への責任をまっとうしようとする現場の職員が
保身や利益しか考えない管理職の無理解に苦しむというシチュエーションは
身につまされるものがあります。
 
 
脅迫事件の裏には企業や自治体の醜いエゴが隠されていました。
でも最後には大団円でハッピーエンドを迎えます。
「甘い」と感じる部分もありますが、やっぱり読後感が良いお話の方が好きですね。
 
 
本当に作者東野氏は人が変わったな~と思います。
昔の作品とは大違い。