仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「日本民藝館手帖」  日本民藝館   [ダイヤモンド社]

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駒場日本民藝館の手引き書ですが、柳宗悦・民藝活動の入門書としても
適当だと思います。
 
宗悦氏の思想や民藝活動の推移がわかりやすくコンパクトにまとめてあります。
 
「民藝品」とは何か、以下のように定義づけています。
    
    ・実用性=鑑賞を目的に作られたものではなく、用いるために作られた、使いやすさを
           追求することで、次第に形が研ぎ澄まされ、美しい形状が生まれてくる。
  
    ・無銘性と職人性=無名の工人によって作られたものである。彼らは品物に銘を入れずに仕事をした。
             つまり、自らの名を誇るのではなく、出来上がった品物や仕事の質で勝負をしたのである。
    ・多量性と廉価性=民衆の日常生活の需要に応えるためには数多く作る必要があった。
                また、日常で使う為には、買い求め易い適正な値段も同時に求められた。
    ・地方性=各地の風土や生活様式に根ざして作られた生活の道具には、独自の形や色や模様といった、
           豊かな地域性が色濃く現れてくる。
    ・協業性=良い品を数多く効率よく作るためには、伝統に培われた熟練の技による協同の作業が必要とな           る。熟練した職人たちの仕事が互いを助け補うことで、はじめて美が保証されるのである。
 
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収蔵品や建物内部の写真がたくさん載っており、
癒し系の絵本のように楽しめます。
 
美しい美術品の写真集はたくさん出ていますが、この本のように
寝る前に手に取りたくなる本はありませんでした。
 
本冒頭の宗悦氏の「日本民藝館の使命」の文章から
その理由が理解できるような気がしました。
 
  「この民藝館は美しい品物だけを並べようとしております。ものの存在価値は美的本質によるのであって、他 の要素はこれに比べては二次的なものと考えられます。・・・・・・・・・・・・スウェーデンなどには立派な民俗博物 館があります。かそこでは雑多な物を多数並べるため、しばしば醜いものさえ中に加わるのです。同じことが従 来の美術館にも言われると思います。それは美的価値よりも、時としては由緒を重んじ、あるいは在銘にとらわ れ、あるいは技巧にこだわり、あるいは種類に滞る等、その結果玉石混淆し、美的統一を失ってしまいます。そ うした冷たいただに陳列所からはっきり区別されるのが、民藝館のもつもっとも大きな特色の一つとなるでしょ  う。」
 

民藝館の展示物には解説が表示されていません。
それはあえてそうしているのだそうです。
 
工芸品の売店の空気は、一般的な民芸品店とは一線を画していました。
ありがちな‘ダサさ’がなく、かつ暖かみがあり美しいのです。