「東山魁夷への旅」 日本経済新聞社
小型で軽くて持ち歩くのに便利な本。
東山すみ夫人の監修です。
「旅」をキーワードに、東山画伯の作品をまとめています。
以下のようなコンセプトだそうです。
・この本の中で画伯の旅の足跡を追い、画伯といっしょに絵の中でする旅
・北欧や京都など、実際に画伯が訪れた場所に行って、画伯の旅を現場で追体験する旅
・作品を鑑賞するために、美術館を訪れる旅
「~の旅」というタイトルの8章から成っています。
「日本、北欧、京都、ヨーロッパ、幻想、唐招提寺、中国、心」の8つです。
「北欧の旅」の中の「映象」
海に映った林を描いています。
「京都の旅」の中の「夏に入る」
この章では、画伯の詩文が絵ごとについてるのが
私的にツボ。感興をますますそそります。
「ヨーロッパの旅」の中の「窓」
ドイツのローデンブルグの古い家だそうです。
家の壁面を描いた動きのない画面ですが、
何かが伝わってきます。
「心の旅」の中の「吉野の春」
独特の緑とピンクの色の対比が日本的で美しいです。
晩年は実際に旅に出ることは少なく、かつての旅で描いたスケッチを元に
絵を描いたのだそうです。
上は、奈良・唐招提寺のふすま絵
下は、そのためのスケッチ。
唐招提寺は私も好きなお寺です。
ふすまの絵を見てみたいけど、公開されていないのでしょうね。
他にもスケッチと作品を並べてあるページがあります。
実際の景色を写したスケッチと、それを絵に描いたものとでは違うのが
わかります。
もちろん、同じ景色であることはわかるのですが、
伝わってくるものが全然違います。
画伯の心のフィルターを通して描かれたものだからでしょうか。
その景色から画伯が得た感動を具象化したものだから
現実の景色をさらに濾過・純化した美が表れているのかもしれません。
実際に訪れたのは夏でしたが、雪景色の城を描きたくて
季節を変えたのだそうです。
「冬には本当にこのような景色になるのか」と気になっていた画伯は
後年冬にまた訪れて確認して安心したそうです。
「絵なんだから、現実と違ったっていいのでは」と思ってしまった私は
芸術を解する資格が足りないですね
この本には、画伯の作品の何がどこの美術館に所蔵されているかが
載っており、それぞれの美術館の案内も書いてあります。
画伯の作品は以前から好きなのですが
まとまって鑑賞したことはないので、行ってみたいです。