「はつ恋」 ツルゲーネフ [ロシア]
ツルゲーネフは19世紀ロシアの代表的小説家の一人。
「はつ恋」は彼の代表作。
主人公ウラジーミルは16歳の貴族の少年。隣家に引っ越してきた年上の美しい女性ジナイーダに
恋をする。しかし、ジナイーダは複数の崇拝者男性をはべらせて楽しむような奔放な女性で
ロシア文学にしては短い作品。
なるほど「初恋」とはこのようなものか、
と千々に思い乱れる彼の心理が、詩的な文章で詳細につづられています。
一夏(短い期間)の淡い恋、しかし彼の一生に忘れられない印象を残す、
といった、いかにもな設定です。
男性のロマンチックな心情に訴えかける作品です。
主人公と父の関係性も、いかにも男性特有のロマンチシズムといった感じ。
女性は「ケッ」と思ってしまうかも(笑)
ただ、これ以上にない残酷な破局の仕方がちょっと気の毒。
トラウマになっただろうなあ。
冒頭では、ウラジーミルは40歳になっています。
友人と雑談中に初恋の思い出話を語るという展開になり、
彼の回想が続いていくという構成。
この構成は、ドイツのヘッセの「少年の日の思い出」でも
とられています。
日本ではあまりないような気がするけど
欧米の文学では典型の一つなのかなあ?
ロシア文学が読みにくい理由の一つは
登場人物の名前だと思います。
同じ人物なのに呼び名がいくつも出てきます。
ロシア人の姓名は、ファーストネーム・ミドルネーム・ファミリーネームの三つです。
息子と娘でちょっと違うのは、ロシア語の名詞は男性と女性に分かれるからなのです。
だから同じ家族でも、男性と女性で名字がちょっと違います。
息子 アレクセイ・アレクサンドロヴィチ・パヴロフ
娘 マリーヤ・アレクサンドロヴナ・ パヴロヴァ
それから正式名でなく、愛称で呼ぶことも多いです。
マリーヤ→マーシャ アレクセイ→アリョーシャ
ロシア語には敬称がないそうです。(英語のミス・ミセス・ミスター)
敬意を込めて相手を呼ぶときは、ファーストネーム・ミドルネームだそうです。
アレクセイ・アレクサンドロヴィチ
マリーヤ・アレクサンドロヴナ
ややこしいですね~
(現代のロシアにおいては変化があるのかもしれませんが。)