仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「田園交響曲」  ジッド  [フランス]

明治のころの、わりと短い小説
 
 主人公の牧師は身よりのない少女を引き取る。彼女は盲目で、ヘレン・ケラーのように教育を受けていない状  態だった。美しく知性的に成長した彼女のため、牧師やその妻・息子は大きく影響を受ける・・・。
 
 
 
キリスト教の信仰をテーマとした深遠な文学であるはずなのに
自分に信仰心がないためか、その崇高さをまったく感じ取れませんでした
すみません。
 
読後感は東野圭吾の不倫小説「夜明けの街で」によく似ています。
私は主人公の牧師ではなく、その妻に感情移入をして読んでしまいました。
作者の意図したテーマからずれてるとは思うんだけど
 
 
少女を妻に相談もせずに引き取って帰宅すると、その妻は不機嫌になります。(当たり前)
結局、少女を世話する実質的な負担は妻に大きくかかるわけですから。
しかし牧師は「妻には奉仕の心が足りない」みたいなこと思って不満を感じます。
 
少女は牧師から紫の上的教育を受けて純真・清らかに成長していきます。
それと生活の苦労にやつれる妻を比較して内心批判しますが
その辺りの心理が、「夜明けの街で」の主人公が不倫に走る心理によく似ているような気がします・・・。
 
 
物語の結末は、牧師・少女・息子の三角関係が破綻して悲劇を迎えるわけですが
その手前で、牧師は妻に、息子が少女に好意を持っていることを問題だとして相談します。
妻は「そうなることは初めからわかっていました。」と言います。当然夫の本心も。
さすが、鋭い!不機嫌はそこからも来ていた訳です。
 
 
牧師が少女とデキちゃった後の彼の独白より。
   わたくしの愛が、よしんば人間の目には罪障とうつろうとも、ああ主よ、せめてあなたの目にとっては聖なる    ものだとおっしゃってください。・・・もはや彼女を愛さないとなったら、わたくしは今度は慈悲の心で彼女を愛   することになりましょう。もはやジェルトリュードを愛さないということは、あれを裏切ることになります。あれに   はわたくしの愛が入り用なのです。
 
いや~、不倫は不倫(=倫理に反する行い)だと思うんですけど。
聖書にだって、「汝、姦淫するなかれ」って書いてあるし。
不倫は姦淫には入らないんでしょうか。
 
しかも、結局はふられちゃうしね。
なかなかこっぴどいやり方で。
 
 
不倫相手にふられた後、すごすご奥さんの元に帰っていくラストシーンが
やっぱり「夜明けの街で」に似ています・・・。