仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「リア王」  シェイクスピア    [イギリス]

四大悲劇のひとつ。
 
年老いた王様が引退するにあたり、
財産(領土)分けをすることにして、
三人の娘に「父への孝心に比例した分だけ領土をやる」といって
腹黒の姉二人のちゃっかりだまされ、
誠実な末娘コーディリアを勘当してしまうが
すぐに後悔する、という話。
 
 
感想は一言で
権力を持った老人がボケると手に負えないものですな
都知事や某新聞社主を思い出しました。
 
 
 
財産分けのために、娘の愛情を試す所からバカだし、
その目的を知らせてから返事をいわせて
その言葉だけで判定するのが、いよいよもうろくしてる
 
コーディリアも決して父をどうでもいいとは言ってなくて
「娘が父に抱くごく当然の愛情を持っています」って言ってるのに。
二人の姉の虚言の矛盾を的確についた説明も述べているのに、
それもわからないボケじじいです、リア王
 
二人の姉に領土を譲ったものの
「王」の称号は譲らず、常におつきに百人を従えることを要求したりして
半端に自分の地位にしがみつく所も見苦しい。
 
 
二人の姉は、領土を譲られたとたんに父を冷淡に扱うようになるのですが、
その辺りは姉たちに共感してしまいました。
ごもっとも、と思ったくだり。
  「このごろはお年のせいで大層むら気におなりね。これまでかわいがっておいでだった、それをあんな風にほ うりだしてしまうなどと、それこそ分別が無くなってきた何よりの証拠。」
 「昔からご自分のことはほとんど何もお見えにならなかいたちだったけど、その上お年なのだから、私たちも覚 悟しておかなければ駄目。・・・・」
老人に対してかなり手厳しい批判が続くのですが、実の娘にここまで言われるのは
自業自得だと思ってしまいます。
 
だから私には孝心厚いコーディリアの方が
偽善的に感じて存在感が薄いです。
 
 
 
しかし。
姉たちを悪人に仕立てる描写に怠りはありません。
この物語では、もう一組の父子の愛憎が横糸になっています。
大貴族の父と跡取りの兄、
その父兄を陥れてこの国の実権を得ようとするエドマンドという庶子の弟。
 
二人の姉は有夫の身でありながら、エドマンドをめぐって醜い争いを
くり拡げるのです。
最期にはお互い殺し合ってしまうというえげつなさ。
 
舞台ではきっとエドマンド役は男性的魅力たっぷりの役者さんが
あてられるんでしょうね。
そうでないと説得力ないし。
 
 
最期は、コーディリアは獄中で殺され、悲しみでリア王も死んでしまいます。
が、その悲劇より、
自分の悪行をかみしめながら死んでいくエドマンドの
悲哀の方が心に残りました。