仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「下町ロケット」  池井戸潤   [小学館]

直木賞を受賞して話題になった作品
 
 主人公 佃は、中小企業佃製作所の社長。宇宙科学開発機構の研究員としてロケットの開発に
 携わった経歴を持つ。家業を引き継いだ後も、高度な技術を開発し、業績を伸ばす。
 佃製作所が高度な研究・技術を持つことが元で、大企業とやり合うこととなる。  
 
 
私好みの小説です
「男のプライドを賭けた戦い」って好きですね~。
戦国時代小説を読むような。
 
池波正太郎の「真田太平記」を連想しました。
小国領主が自分の才幹を活かして、中央の強国と渡り合っていくという。
 
最初は大企業の横暴にツブされそうになる佃製作所ですが
だんだんと形勢が逆転していきます。
‘正義の味方’の加勢を得て勝つシーンはスカッとします。
 
 
テーマは、「仕事に何を求めるか」ってことだと思うのですが、
佃が最終的にとった選択がすごくいいと思います。
 
今の社会は「金が儲かることがすべて」という思想に席巻されていてイヤですね。
いや、お金も大事です。ゆとりを持って生活できる程度の収入は欲しいです。
でもお金がすべてじゃないでしょう。
自分の職能を活かして、社会に還元することで収入を得ることが
仕事の喜びなのだと思うのですが。
 
 
 
自社でのロケット部品製作という会社のステップアップを目指す佃社長に
反発する若手社員の態度にとってもむかついてしまいました。
利益は社員に還元すべきって、そこまでの利益をあげられているのも
社長の経営方針のおかげでしょう。
若いのに保守的で、みみっちい発想だし。
大体、そこまで若手が意見を自由に表明できる社風なのも
社長のおかげでしょうに。
 
甘ったれてる若造め!
って、こういう業界を見たことはないから、実際はわからないんですけど。
 
 
その他、それぞれの登場人物がそれぞれの立ち位置で
個性的に描かれているのが、小説として魅力的です。
 
ロケット部品の受注先である帝国重工の社員たちが
印象的でした。
下から、富山、財前部長、水原本部長、藤間社長。
 富山は器が小さくて小物。
 財前は私好みの渋いおじさまな感じ。佃製作所の力量を認めた後の
敬意を表した対応がいいです。
 水原本部長は、佃に対する裏の工作に一本とられました。
さすが出世する人は違うなあ。
 ラスボスの藤間社長は佃と同じ過去へのこだわりを持っていました。
 
やっぱり男は仕事へのプライドを持ってないと
 
 
ラストシーンは佃部品使用のロケットの打ち上げで
感動的にしめくくられます。