「マスカレード・ホテル」 東野圭吾 ［集英社］
ミステリ長編。シリーズ物ではありません。
舞台は東京の一流ホテル
連続殺人事件の次の犯行を防ぐために、刑事がホテルの従業員になって
捜査を行うという設定。
東野氏の最近の新作にはがっかりしていましたが
これはおもしろかったです。
とりあえず愛想を尽かさずに済んでよかった
ヒーローは、若手刑事 新田。
イケメンで切れ者だけど、プライド高くわがまま。
ヒロインは、ホテルクローク（受付）山岸尚美。
美人で有能、仕事熱心、堅物。
クロークに配置された新田の世話役となった尚美。
二人が組んで、ホテル業務と捜査を行っていきます。
その他、尚美の素敵な上司や、新田の相棒刑事 能勢など
キャラ多彩で楽しめます。
トラブルを起こすお客も何人か出てきます。
ホテル業務の日常が描かれていて、まずそこが楽しめます。
尚美は自分の仕事とホテルを愛していて
お客様が快適に過ごせるように日々心を砕いています。
私も以前、一流ホテルに宿泊した時に
そのホスピタリティに感動しました。
従業員の皆様は、これぐらいの高い意識で勤務されているのだろうな
とうなづけました。
物語の最初は、尚美が新田の教育係になり
行儀・目つきの悪い刑事 新田をホテルマンにしつけていく
苦労が描かれています。
ホテルマンと刑事というかけ離れた業種をかけあわせた所が
おもしろさですね。
最初は犬猿の仲の二人でしたが
日がたつに連れ、お互いのプロ意識を認めあい
近づいていきます。
客のトラブルを処理する尚美の鮮やかな対応ぶりや
ホテルマンとは違う視点で分析する新田に
二つの職種の違いを見せられた気がしました。
トラブル客のエピソードはそれだけ読んでも楽しめましたが
意外なところで事件の謎に絡んでいたりもして
ミステリーとしてもなかなかでした。
尚美も新田も好みのキャラなのですが
二人の関係が接近していく辺りの
描写がちょっとベタだったかな～
タイトル「マスカレード（仮面舞踏会）は
ホテルマンの仮面をかぶる刑事、
仮面舞踏会のように普段とは違う空間を楽しむ客たち、
など、いくつかの意味がこめられているようです。
