仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「宇治拾遺物語・十訓抄」  小学館

「日本の古典をよむ」というシリーズで
原文と現代語訳が交互に載っています。
 
本の概容や成立の歴史的経緯などが説明されていて
長い作品は、全文ではなく一部選ばれた文章が載せられています。
 
古文の勉強として読むのに良いシリーズだと思います。
 
 
 
宇治拾遺物語」「十訓抄」は共に、鎌倉時代の説話集です。
説話はいわゆる「昔話」的な文章です。
 
一話一話は短い文章だし、庶民的な内容なので
源氏物語などより読みやすいかもしれません。
 
 
 
 
宇治拾遺物語」は単純におもしろかったです。
‘古典’とかまえずに、ブログとか雑誌の読者投稿欄のおもしろ話を
読んでいるような感覚で、笑いながら読めます。
 
こぶとりじいさん」「舌切り雀」「わらしべ長者
芥川龍之介の「鼻」などの元になったエピソードが入っています。
 
 
印象に残った話は「大井光遠の妹の強力の事」
 
相撲取りの家に強盗が入って妹が人質になったのに
兄はちっともあわてない。
「妹は自分の二倍も強力だ」と。
 
楚々とした美女の妹が、強盗に捕らえらて涙を流しながらも、
片手で木材を指でぼきぼきと砕いていく、
そのシーンにゾクゾクします。
 
 
 
 
 
 
「十訓抄」は十の教訓話という意味。
10の徳目を挙げ、それにまつわるエピソードを紹介しています。
といっても上から目線ではなく
暖かい口調で語りかけているので
カチンとはきません。
 
 
一つ、宇治拾遺物語と対照的な話がありました。
 
色好み(恋愛豊富)な男性が素敵な女性に言い寄った結果
失敗するという話がそれぞれあるのですが。
 
宇治拾遺の「平貞文、本院侍従の事」は
平中という男が宮仕えの女房 侍従に思いをかけます。
色好みで名高い平中に対して、女房も趣味の高さには定評のある女性。
 
趣向を凝らしてアプローチする平中に、相手をそらさない対応をする侍従だが
深い仲になる手前でするっとかわしてしまいます。
 
「いっそもうあきらめてしまいたい」と
平中は家来に侍従の使用したおまるを奪ってこさせます。
「汚い物を見て幻滅してしまおう」という発想もすごいのですが
侍従の方が上手で
おまるの中身はかぐわしい香木だったのです。
いよいよ思い切ることができずに平中は苦しみましたというラスト。
 
 
十訓抄の「色好み道清の失態」は
道清という男が貴族の屋敷に勤める女房に言い寄ります。
誘いを何度も断られた末に、中秋のある日
やっと「会う」という返事をもらえました。
案内された道を進んでいくと、庭は虫の音、秋の花々など風情たっぷりです。
 
部屋に入って待っていると、音高く女性が入ってきてはきはきと話し出します。
さっさと服を脱いで、「さあ、どうぞ」と言われ
道清は度肝をぬかれ、何も出来ませんでした・・・。
 
原文の表現はかなり露骨で、古文でこれかあ、とびっくりします。