「真砂屋(まなごや)お峰」 有吉佐和子 [中公文庫]
舞台は江戸時代後期
真砂屋は材木屋、お峯はその跡継ぎ娘
江戸時代も長くなり、その矛盾が社会に露呈している時期で
武士は窮乏し大商人が贅沢をむさぼっている頃。
真砂屋は、長屋建造のためだけに材木を売るという奇特な店。
お屋敷住まいのお大尽相手には商売をしない。
火事の多い江戸では材木屋は儲かる商売で
真砂屋もたいした身上持ちのはずだが、
公私ともに派手なふるまいはなく
主人から使用人までつましい暮らしを通している。
物語はお峰のお見合い話から始まります。
石屋の三男坊で家を出て大工修行中の甚三郎に
長男(石屋の当主)から話しが持ち込まれます。
大工で身を立てるつもりの甚三郎は
大店といえども養子に入るつもりはありません。
しかし、断り切れずに見合いにだけは出向くことになります。
この甚三郎がかっこいいんですね~。
嫌々出向いた見合いですが
お峰に一目惚れをして、結局養子に入ることになります。
お峰も見目心映えともに素晴らしい女性です。
お峰の祖父で真砂屋当主の七郎兵衛も、芯の通ったポリシーあるかっこいいじいさまです。
真砂屋は、社会奉仕の精神に貫かれた立派な店なのですが
時勢に合わなくなり、立ちゆかなくなってきます。
後を継いだ甚三郎お峰夫婦は
時流に合わせて、経営理念を曲げて営利に走るかという進退を迫られますが
店をつぶすという道を選びます。
店をつぶすための方略として
お峰は大金を使って遊蕩することになります。
そこで上方まで旅をして
「衣装比べ」というイベントをこなし
大評判をとります。
この衣装比べの辺りは、通な着物好きの方には
こたえられないエピソードかと思います。
男性の人物像からは
男性作家の時代小説の名作にあるような
男っぷりが楽しめます。
お峰と甚三郎の夫婦像などでは
女性好みの愛情物語にひたれます。
お勧めしたいです。