「夕顔」 白洲正子 [新潮文庫]
白洲正子氏の随筆集
晩年に書かれたものが集まっています。
掲載された雑誌はバラバラなので
内容もさまざまです。
印象に残った話について。
[ツキヨミの思想]
河合隼雄氏がテレビ番組で語った「現代人と日本神話」を話題として取り上げています。
「中空構造」という思想に興味をひかれたと語っています。
たとえば、日本の神話では、神さまは三人一組で生まれることが多く、
真ん中の神様はただ存在するだけで何もしない。
(アマテラス、スサノオに対してのツキヨミ)
日本の生活における、この中空構造のもっとも顕著な在り方は天皇である
と述べています。
この見解が興味深かったです。
私も、日本における天皇制の存続ということが日本文化の特質の一つの表れ
だと考えているからです。
天皇が政治の実権を握っていたのは歴史上、初期だけであるのに
以降もずっと制度として存続しています。
歴史を振り返っても、天皇制を打倒しようとした勢力は見られません。
このような形態をもつ国には他にあるのでしょうか。
「中空構造」という思想はこの命題の解答となるような気がします。
もっとこの思想について読んでみたいと思います。
[夕顔]
白洲氏が夕顔の花が開く瞬間を見たいと一つの花を何時間も見つづけていたら
他の花は咲いたのに、その花だけは枯れてしまったという話。
私は「目に見えない力」とか植物にも心があるとか
わりと信じる方です。
他人からの「視線」を感じることはあるし、
ある友人のことを何日がずっと考えていたら
向こうも私のことを思い出していていたとかの
体験があるからです。
現代人に欠けているものの一つは「自然への畏敬」
だと思います。