仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

『かくかくしかじか』    東村アキコ   [集英社]

 
高校から20代の青春期を描いている自伝的作品。
月刊女性誌ココハナ」に連載中ですが
あとコミックス1巻くらいで終わりそうな気がします。
 
育児マンガ「ママはテンパリスト」が出世作のこの作者。
今はすっかり売れっ子で、女性誌にも男性誌にも連載していますが
創作より実録物の方が私は好きです。
 
 
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キーパーソンは「先生」
 
といっても学校の先生ではなく
絵画塾の先生で、アキコを美大に押し込んでくれた恩人です。
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強烈な個性の持ち主 日高先生
私はタイプです
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宮崎の田舎町で個人の絵画塾を営む日高先生
プロの画家でもあります。
 
竹刀で男女とわず生徒をぶったたく超スパルタの先生ですが
5000円の月謝で、フリータイムで美大受験のための絵画指導に
精魂かたむけてくれるんです。
今の時代には絶滅した古いタイプの教師の鑑かも。
 
 
しかし。
その先生の深い愛情、大恩に生徒アキコはちっともむくわない。
それでもスタンスを変えない日高先生はすごい人物です。
 
 
 
 
物語は回想として語られており
現時点での作者のモノローグが時々入ります。
 
「あの頃は子どもだからわからなかった。
でも大人になった今はわかる。」
という意味のセリフが多いです。
 
作者は現在アラフォー。
回想してるのは20代の自分。すでに働いている。
 
社会的な基準としては20代の社会人は「大人」とみなされる訳ですが
でも確かに精神的には「子ども」かも。
この作品中の作者はそのような人物として描かれているので
わかりやすいけど
世間一般の人々を考えてもそうだなあと思う。
自分も20代のころなんか、全然大人とは呼べなかった。
 
10代=子ども  20代=若者  30代~=大人
というのが、現代に合った区切りかも。
 
 
 
 
作中のアキコのじたばたぶりには
若気の至り、保護者の愛情にどっぷり甘えたモラトリアム若者のみっともなさが
実にリアルに描かれていて
自分の青春期を重ね合わせると
なんとも痛がゆい。
 
現代にピタリはまった青春物語といえましょう。
 
 
 
 
吉田秋生氏の「海街ダイアリー」の実写映画化が決まりましたが
この作品も映画向きだと思うなあ。
その場合、日高先生の配役がもっとも重要。