「平家物語 あらすじで読む源平の戦い」 板坂耀子 [中公新書]
副題の通り、平家物語をあらすじで知ろうという本。
古典文学の中でも、平家物語は親しみを覚えない作品でした。
戦いばかりで、暗そうで。
最近は、興味がわいて読んでみようかという気にもなっていたのですが
いかんせん長い。
なかなか手をつけられません。
まずは、大づかみに概要を知ろうと
本を探した所、ちょうど良いのを見つけたのがこの本。
著者は大学の先生で
最近の学生は古典の知識が全然ないことを実感し、
そういう人々に、とにかく「平家物語」を知ってもらうという
目的でこの本を書いたそうです。
知識0の人に、この長くてややこしい物語をわかってもらう
という姿勢で書かれているので
とてもわかりやすいです。
平家物語の手引き書としてお勧めです。
第一章の第二回のタイトルは
「読む気にならない理由とは」
身も蓋もないというか
古典文学の解説本でこの章題はないですよね~
内容は「登場人物が多すぎる」「戦闘場面が多すぎる」
その通りだと思います。
それを処理する方法も指南してくださっています。
とはいえ、受験対策マニュアルのような
実利のみの、無味乾燥な本ではありません。
学術的な解説もあり、
正しい方向で作品への興味をひく一冊となっています。
この本を読んで平家物語の概要がつかめたような気がしていますが、
なぜ私にとってとっつきにくかったのかが、わかりました。
日本の古典文学=平安時代
なんだなあ、というのが一つ。
古典文学は、奈良、平安、鎌倉、江戸と広い時代に渡っているのですが
平安時代がメインですよね。
趣深いとか優雅なイメージ。
路線が違って殺伐としてる。
とはいえ、平安貴族的な価値観もまだ残っていて
そこが返ってわかりにくいのかもしれない。
それから、この作品の一つの主題は「滅びの美学」だと思うのですが
私は受け付けないんです、そういうの。
太宰治とか嫌いだし。
あと、自分が殺した敵のためにさめざめ泣くとか、
全然共感できないんですけど、みなさまどうなんでしょう?
平家の人物は優柔不断なヘタレが多くていらいらします。
あ、でも平知盛は好きです。「見るべきほどのことは見つ」がかっこいい。
でも、この辺りの感覚は当時の死生観を理解していないと
わからないのかもしれません。
命より断固優先すべきものが存在していた時代ですから。
やっぱり、現代人にはわかりにくい作品なんだなあということが
確認できました。
時代背景についての知識がないと味わえないですね。
そう思うとやっぱり「源氏物語」は
時代や国を超えた名作なんだなあ。
いつの時代も変わらない人の心の動きが描かれていますよね。