仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「鑑定の入り口  やきもの百科」   中島誠之助  [淡交社]

筆者は、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定者。
 
題名の通り、やきものの入門書です。
 
 一章 国宝物語
 二章 伊万里の風景
 三章 やきもの百科
 四章 形と意匠
              という四章だて
 
「やきもの」をいくつかの角度から語っていて
日本の陶磁器を概括できると思います。
 
 
 
 というだけなら、他にもいろいろな入門書が出ていますよね。
 
しかし、この本ならでは、の良さがあるんです。
「やきもの入門書」という枠以上に
ひろくお勧めしたい一冊です。
 
 
まず、文章が文学的で
かつ読者に語りかける文体で
ひきこまれます。
 
雑誌の連載をまとめた本なので
一話完結の短い文章が並んでいますが
毎回、冒頭の文が印象深いです。
 
専門用語は使われていますが、知識をひけらかしている
感じはありません。
 
 
 
「やきもの百科」の章では、全国各地の焼き物が紹介されているのですが
今まで聞いたことのないものもありました。
それは今ではもう廃れてしまっている種だからなんです。
 
認知度が高いとか文化芸術的、価格的価値があるとかの基準だけではなく
本当に「日本のやきもの」を広く語ろうとしているんだなあと感じました。
 
「現在では廃れてしまっている」という記述も
柔らかい表現をつかっており、和みます。
 
 
 
やきもの、そしてその背景やまつわる人々に対しての
筆者の愛情が自然に伝わってくる文章です。
 
「やきもの」の本ではあるけれど
専門に偏った内容ではなく
文化技術の変遷や風土性など
広いバックグラウンドが感じられる豊かな内容の書です。
 
 
 
日本文化、工芸品に関する読み物としても
お勧めしたいです。
 
細かい知識を追わなくても
読んでいて心地よくなれる本です。
 
 
 
 
ここしばらくは、芸術関係の本を読むことが多く
学術的な参考書系が多くなりがちです。
 
そうすると
どんな文章であっても、書いた人物の
人間性は伝わるものなんだ
ということが返って実感できますね。