仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「内田百閒」    ちくま日本文学全集文庫

筑摩書房の文庫シリーズ 「ちくま日本文学全集」 全50巻
日本の近代の著名な作家が手軽に読める良書です。

読破は無理だけど
できるだけ読んでみたいです。

大学では日本近代文学専攻でしたが
社会人になってからはあまり読まなくなっていたので
久しぶりに初心に返ります。



内田百閒(うちだ・ひゃっけん)は
随筆家・小説家で、夏目漱石の弟子。

作品はみな短編のようです。

前半は、日常の不条理ファンタジーというような
ショートショート程度の小品が続いていました。
私はこのジャンルは苦手な上、十数編も続くので
つらかった。


一番印象に残った作品は
「餓鬼道肴蔬目録」

これは食べ物の名前を延々書き連ねただけの、
文章ともいえないような文章。





さわら刺身 生姜醤油
たい刺身
かじき刺身
まぐろ 霜降りとろノぶつ切
ふな刺身 芥子味噌
べらたノ芥子味噌
こちノ洗い
こいノ洗い
あわび水貝
小鯛焼物
塩ぶり
まながつお味噌
あじ一塩
小はぜ佃煮
くさや


という調子で百行くらい続きます。
それだけのものなんだけど
読み飛ばせない。
何かの力を感じます。
これが文学のちから?

一つには、それぞれの名前に
興趣があるからでしょう。
これが「カップラーメン ハンバーガー カレーライス 牛丼」
とかだったら、ダメだろうなあ。

一番の理由は、作者がこの文章を書いた理由いや状況なのでしょう。
昭和19年の作。
戦時中、食べ物がなくて飢えていた時、
せめて食べたい物の目録を作ろうということで記したものなのです。