「川端康成」 [ちくま日本文学全集文庫]
収録作品の選択に驚きました。
「伊豆の踊子」も「雪国」も入っていないんです。
短編が8編で
あとは「山の音」という長編が一つだけ。
短編「葬式の名人」は自伝的小説で
川端康成は肉親に縁が薄かったことがわかりました。
「山の音」
私は名前も知らなくて、この一冊がほとんど
この作品で占められていることが意外でした。
戦争が終わってまもない日本のある一家。
主人公は、妻、息子、息子の妻と暮らす会社員。
息子は浮気相手がいて、
夫と不仲の娘は、二人の子供を連れて実家に戻ってくる。
特別な事件は起こらない、
ある家庭のある時期を描いた物語です。
女性週刊誌の実録ものを読んでいるような気がちょっとして
純文学というより通俗小説っぽくて意外、と思ったけど
川端康成ってそういう作家だったかも。
「雪国」「伊豆の踊子」もそういう感じ?
終戦後の日本人の一般的な心境が
うかがえるような所は、興味深いです。
この作品が何を語っているのかは
はっきりつかめませんでしたが
長くても一気に読み上げてしまえる
力を感じました。
もうちょっと年をとってから
読んだ方が理解できるのかもしれません。