仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

九月の歌   ‘万葉集より’

朝に行く 雁の鳴く音(ね)は 我がごとく 物思へかも 声の悲しき   

おし照る 難波堀江の 葦辺には 雁寝たるかも 霜の降らくに

今朝の朝明(あさけ) 雁が音(ね)聞きつ 春日山 もみちにけらし 我が心痛し      穂積皇子

秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花葛花 なでしこの 花おみなへし また藤袴朝顔の花           山上憶良

我がやどの 萩の末(うれ)長し 秋風の 吹きなむ時に 咲かむと思ひて

我が岡に さを鹿来鳴く 初萩の 花妻どひに 来鳴くさを鹿     大伴旅人

さを鹿の 胸別けにかも 秋萩の 散り過ぎにける 盛りかも去ぬる     大伴家持

我が背子が かざしの萩に 置く露を さやかに見よと 月は照るらし

萩の花 咲きのををりを 見よとかも 月夜(つくよ)の清き 恋まさらくに

夕月夜(ゆふづくよ) 心もしのに 白露の置く この庭に こほろぎ鳴くも     湯原王

あしひきの 山の黄葉(もみぢば) 今夜(こよひ)もか 浮かび行くらむ 山川の瀬に     大伴書持