仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「富士正晴」    [ちくま日本文学全集]

この人も一般的には有名でないと思います。
小説、評論、詩、エッセイなどを書き、絵も描いていたそうです。



兵隊として中国に送られ、終戦後捕虜になった後、帰国。
戦争体験が、その後の創作や思想に影響した作家はいろいろいますが
その中でも異色だと思います。

異常で悲惨な体験をして、それを書いているのだけど
悲劇に酔っている面はなく、冷めた視線でとらえています。
非日常な状況の中でも日常は営まれているというような。

戦前、戦後で国全体の価値観が180度変わった社会状況において
どんな思想や理想もあてにはできないという
価値観を持つに至ったようです。



戦争中は、女性が性的暴行を受ける社会状況が生まれますが
この作家はそれを
男性=加害者、女性=被害者という関係性ではない
描き方をしています。

女性の一員としては憤慨すべきかもしれませんが
「へ~」と思ってしまいました。
女性には決して理解できない男性の一面というものでしょうか。