「渡辺一夫」 [ちくま日本文学全集]
フランス文学者。
キリスト教史についての論文が大半でした。
私はキリスト教が肌に合わないので
興味が持てませんでした。
文章がわかりにくいとか
偏向的な思想だとか
そんなことは全然ないのですが。
日本人の価値観の底流には神道があると思います。
明治以後(戦時中を除いて)、布教が認められているのに
根付かないのはそのせいじゃないかなあ。
ところでどうしてキリスト教徒って
布教するのが好きなのでしょうか。
日本の仏教と神道は、一般人に向かって
積極的な布教活動はしてないけど
世界の宗教ではどちらが多勢なんでしょうか。
文章から伝わってくる渡辺氏の人となりに対しては
自然と頭を垂れる心持ちになりました。
古き良き、品格のある学者でいらっしゃるというか。
印象に残ったのは
「辰野隆先生のこと」
亡くなった恩師にまつわるエピソードをつづった随筆ですが
敬愛の情が全文から伝わってきます。
「取るに足らない一生徒の自分に」的な言い回しが多く
ご自分も地位のある学者であるにもかかわらず
謙譲の姿勢を崩しません。
こういうのは、偽善的という見方もありますが
古き良き日本人の徳性に心が洗われます。
自分は全然そうじゃないですが。