仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

永平寺 参籠

永平寺の大きな特徴は、僧の修行の場であることで
現代においても修行僧のみなさんは、伝統的な厳しい修行生活を送っているそうです。

一般人も各種体験ができます。
今回、私は参籠をしてきました。

参籠(さんろう)というのは、宿坊に泊まることです。
寺内に宿泊し
夕方の4時から翌朝8時くらいまで、
夕食、座禅、入浴、就寝、朝の法話、朝の勤行参加、朝食
という日程を過ごします。

ちなみに、夕食と朝食(本当は入浴も)は修行の一環です。
消灯は9時、朝の集合は4:20でした。



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                            部屋の窓からの眺め
                       三階でしたが、窓一面が巨木の緑で埋まって
                       その景色だけでも心洗われる気持ちになれます。
     
              
行く前はどんなに厳しい環境なのかとドキドキしましたが
お部屋は普通の和風旅館のようでした。
お菓子も置いてあったし。
お茶は廊下に給湯器がありました。使った茶碗は自分で洗って片づけるという決まり。
敷き布団が薄いところが旅館との違いを感じました。
浴衣は貸していただけましたが、タオルやドライヤー、歯ブラシはなし。
お風呂は広くてきれいです。シャンプーはないけど石鹸はおいてありました。

宿泊者用の貴重品ロッカーがあったし、
拝観受付近くに大きな荷物用のコインロッカーがありました。



お寺でほぼ一日を過ごしましたが
全体の印象としては、修行僧の方々は厳しい生活をしているけど
一般の参拝客にそれを押し付けることはしない
という感じでした。

客の応対・案内は新人の修行僧の仕事のようで
修行の一環なのでしょう。
ういういしい様子がほほえましいです。

一日のうちに何度も読経の声や鐘が聞こえてきて
常に行事や修行が行われている現役の道場なんだなあと実感しました。


参拝客に対しては物柔らかな対応で
厳しさを押しつけはしないけど
勝手な行動でお寺のあるべき空気を乱すことはないようなシステムに
しているようです。

一般参拝客向けにも、参籠者に対しても
「利用者アンケート」をおいていました。
「率直なご意見ご感想をどうぞ」ということでした。

お寺社ではあまり見たことありませんが
これも永平寺の姿勢のあらわれなのかなと思いました。
客に迎合するというのとは違って
「自分に厳しく」ということでしょうか。





参籠のスケジュールはそれぞれ感銘を受けましたが
印象に残ったのは食事です。
曹洞宗では食事も修行の一環で
前後にお祈り(読経)があるのはもちろん、食べ方も細かく決まっているそう。

私たちが言われたのは、
しゃべらない。必ず皿を持ちながら食べる。周りの人と同時に食べ終わるようにペースをあわせること。
はしは置く位置が決まっていて、終わる前にお茶ではし先を洗ってから持ち帰る。

そのように食事してみてわかったことは
・「皿を持ちながら食べる」と、今食べている食べ物に集中して向かいあうことができる。
・黙って食べていると同席者にかかわりなく勝手に食べているようになるけど
「同時に食べ終わるようにする」というルールのために
常に周囲の様子に気を配っていなければならず、連帯感が生まれる。

合理的にできています。
狙いが達成できるように行動がきまっているんですね。
食事修行のねらいは食前の読経で唱えます。

【原文】

一には、功の多少を計り彼の来処を量る。

(ひとつには、こうのたしょうをはかり かのらいしょうを はかる)

二には、己が徳行の全欠を忖って供に応ず。

 (ふたつには、おのれがとくぎょうの ぜんけっとはかって くにおうず)

三には、心を防ぎ過を離るることは貪等を宗とす。

 (みつには、しんをふせぎ とがをはなるることは とんとうをしゅうとす)

四には、正に良薬を事とするは形枯を療ぜんが為なり。

 (よつには、まさにりょうやくをこととするは ぎょうこを りょうぜんがためなり)

五には、成道の為の故に今此の食を受く。

 (いつつには、じょうどうのためのゆえに いまこのじきをうく)



【現代語訳】

一 この食事がどのようにして出来たかを考え、自然の恵みと多くの人々の働 きを思い感謝致します。
二 自分の行いが、尊い生命と労力で出来た食を頂くに価するものであるか反省し、供養を受けます。
三 心を清浄に保ち、誤まった行いを避けるために、三毒である貪(貪り)瞋(いかり)痴(おろか)の三つの過ちを  持たないことを誓います。
四 まさに、食は良き薬であり、身体を養い、健康を得るために頂くのです。
五、仏の道を実践するために、この食事を有り難く頂戴致します。


参籠の最初の説明で
手の位置の決まりも教わりました。
立っている・歩いているとき、座っているとき、挨拶の時
それぞれ手の姿勢が決まっています。
やってみると、体が良い姿勢を保つためによかったです。

トイレ、入浴の前後には
祭ってある仏様を拝みます。




朝の法話もためになりました。
こちらは修行僧ではなく
そのような役職のお坊様がいらっしゃいましたが
声を聴いただけで「違うな~」と思いました。
私は全国のお寺社をお参りして
お坊様のお話を伺う機会も増えましたが、やっぱり人によります。


曹洞宗」の座禅とは何なのか
一つ理解できたような気がします。

臨済宗の座禅とは違うのですが
臨済は、悟りを開く=ひとかどの人物になるため
曹洞は、我をすて他者と調和するため
ということなのかな。

正しい姿勢は大切、座禅は実利を求めてするものではない
ということもわかりました。



プログラムの中で
「修行僧の生活」がわかる実録映像を見せてもらい
また案内係の雲水さんからも話を聞きましたが
本当~にきびしかったです!

生活のすべてが修行。(入浴の仕方もきまりがあります)
睡眠は10時~3時くらいで、
食事係になったら起床が一時半になるけど、就寝時間は変わらないという。
就寝スペースは畳一畳分で敷布団は敷けないので
掛け布団二枚をひもで縛って寝袋のようにして
そこに潜って寝るんだそうです。

入門時は雪の正門前で一時間も待って
体育会的な応答の末、やっと入れるとか。







参籠体験、ためになりましたので
また行きたいです。
そして3泊4日の参禅という
修行僧と同様の生活を行う体験もありますが、
そちらは私にできるか自信がない・・・。









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                    えちぜん鉄道に乗って福井駅に向かいます。
 
切符は有人窓口でかって(券売機はない)、はさみでチョキンと切れ目をいれてくれました。
なつかしい~!
                        
今では電車に乗るために人の手を通ることの方が少ないので。