十一月の詩
落 葉 松
北 原 白 秋
北 原 白 秋
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一
からまつの林を過ぎて、 からまつをしみじみと見き。 からまつはさびしかりけり。 たびゆくはさびしかりけり。 二 からまつの林を出でて、 からまつの林に入りぬ。 からまつの林に入りて、 また細く道はつづけり。 三 からまつの林の奥も わが通る道はありけり。 霧雨のかかる道なり。 山風のかよふ道なり。 四 からまつの林の道は われのみか、ひともかよひぬ。 ほそぼそと通ふ道なり。 さびさびといそぐ道なり。 五 からまつの林を過ぎて、 ゆゑしらず歩みひそめつ。 からまつはさびしかりけり、 からまつとささやきにけり。 六 からまつの林を出でて、 浅間嶺にけぶり立つ見つ。 浅間嶺にけぶり立つ見つ。 からまつのまたそのうへに。 七 からまつの林の雨は さびしけどいよよしづけし。 かんこ鳥鳴けるのみなる。 からまつの濡るるのみなる。 八 世の中よ、あはれなりけり。 常なけどうれしかりけり。 山川に山がはの音、 からまつにからまつのかぜ。 |