「シャーロック・ホームズの冒険」 コナン・ドイル[イギリス]
シリーズの第一短編集です。
私はこれが一番おもしろかったです。
「ボヘミアの醜聞」
ホームズにとって唯一の女性が登場します。
といっても恋愛ではありません。
「あのひと」という敬称をもって、ホームズはいつも呼んでいます。
この事件において、ホームズを完全に出し抜いたことにより
ホームズの女性蔑視を改めさせたという偉大な方です。
「赤毛連盟」
おもしろいアイデアでした。
広告を見た赤毛の男達が集合場所に群れをなした、という場面が印象的です。
欧米では、赤い髪の毛は悪く思われることが一般的みたいですね。
「赤毛のアン」でもそうだし。
「花婿の正体」
殺人ではありませんが不愉快な事件です。
義理の娘に結婚をさせたくない(財産目当て)義理の父が、
別人になりすまし、娘をたらしこんで結婚式直前に行方不明になり、
他の結婚相手を見つけるのを妨害するという話。
もっとも不愉快な点は、実の母がそれに荷担していること。
「5粒のオレンジの種」
アシュレイたちもKKKに入ってたんじゃなかったかなあ。
こういう秘密結社の恐ろしい所は、誰が成員かわからないので
隣人も誰も信用できない所にあるのではないでしょうか。
本筋とは関係ないけど印象に残った場面。
激しい嵐の晩、べーカー街の下宿でワトソンとホームズはくつろいでいました。
そこに来客のベルが鳴りました。
ワトソン:「こんな晩に誰がきたのだろう。君の友人かな?」
ホームズ:「ぼくの友人といえば君一人だよ。」
・・・ホームズさーん、さびしくないですか? ないんだろうなあ。
この二人の関係は、ひとえに善良なワトソン君の忠誠と忍耐にかかっています
この件に関するホームズさんの見解は、次のお話で。
「唇のねじれた男」
ホームズの捜査を手伝うことになったワトソンは、二人で馬車に乗り現場に向かう。
事件の経緯を知らないワトソンは、ホームズに尋ねたいが、「彼の思索を乱してはいけない」
と思い、黙っている。思索を終えたホームズの一言。
「ワトソン。君は沈黙という素晴らしい天分を持っている。だからぼくの親友になれるのだ。」
これってワトソンくんにとっては褒め言葉なんでしょうね。実に良い人だ・・。
事件の結末としては、加害者だと思われていた乞食が
実は被害者の変装した姿だった訳です。
記者の仕事として体験してみた乞食のもうけの良さに、本業がばからしくなって
乞食専業になってしまったこの男性。
うーん、収入さえよければ、乞食でも良いと考えますかね~??
事実を知った奥さんが、愛する夫にどういう対応をしたのか気になる所です。。。
「青い紅玉」
クリスマスのごちそうのガチョウの胃袋の中から、宝石が出てくるなんて童話みたいです。
「まだらの紐」
「まだらの紐」の正体は恐ろしい毒蛇でした。
犯人自身も、その犯行もとても恐ろしいです。
依頼者の娘さんのお母さんがどうしてこんな男と再婚したのか謎です。
娘さんを守るために、危険を冒して身代わりになったホームズ。
暗闇の中で時間の経過に耐え、敵の襲来にすかさず反撃した姿はかっこよかったです
女性を軽んじるわりに(だから?)、女性に対して優しいんですよね。
「技師の親指」
ワトソン医師の所に、片手の親指をすぱっと切り落とされた患者が
連れてこられる場面から始まります。
この技師さんはずいぶん無鉄砲な人でした。
読んでる間中、自分の親指がむずむずして落ち着きませんでした。
苦手なんです、スプラッタ系は・・・
「独身の貴族」
高慢ちきな貴族のおぼっちゃまが、大変な名誉を与えてやったつもりの平民の婚約者が
実は最愛の人に死なれた後の「もう誰も愛することはないだろう」という気持ちで、
結婚式の間「愛情はなくても、私の意志の及ぶかぎり良い妻になってさしあげよう」
と考えていたことを知ったとき、どういう気持ちになったのか知りたいです
「緑柱石宝冠事件」
地位も名誉もある落ち着いた紳士が、パニックに陥った姿は痛ましかったです。
真面目で良いお嬢さんが悪い男にたぶさらかされる、という構図は
いつの時代も不滅でしょうか。
ちぎれた宝冠が全部戻ってきたのはいいのですが、
破損されたままで返却して大丈夫なのか気になりました・・。
「ぶなの木屋敷」
依頼人のお嬢さんは、賢くしっかりしていて果断に行動できる人で、好みのタイプです
最後は学校の校長になったそうで、さすがです。
被害者の婚約者の男性もなかなか知恵者でした。