仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「星の王子さま」 サン・テグジュペリ [フランス]

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6月29日(1900年)は、作者サン・テグジュペリの誕生日だそうです。

本文とともによく知られている、かわいらしいさし絵は作者の手によるものです。 


熱烈なファンのいる作品で、箱根には美術館があります。
同じ名前の香水もあります。表紙の絵がボトルに印刷されているかわいい香りです。


私はこのお話はちょっと苦手でした。
あまりにキヨラかすぎる世界で、自分には合わなくて背中がかゆくなりそうな
感じがしていたからです。

でもちゃんと読んでみると、児童文学というよりも大人向けの寓話なんだと
いうことがわかりました。
現代文明への風刺的な話など、なかなか考えさせられます。




一番印象に残っている章を引用します。


 「こんにちは」と、王子さまがいいました。
 「や、こんちは」と商人(あきんど)がいいました。
  それは、のどのかわきがケロリとなおるという、すばらしい丸薬を打っているあきんど
 でした。一週に一粒ずつ、それをのむと、もう、それきりなにも、のみたくなくなる、
 というのです。
 「なぜ、それ、売ってるの?」と、王子さまがいいました。
 「時間が、えらく倹約になるからだよ。そのみちの人が計算してみたんだがね、一週間に五十三分、
  倹約になるというんだ」と、あきんどがいいました。
 「で、その五十三分って時間、どうするの?」
 「したいことするのさ・・・・」

 〈ぼくがもし、五十三分っていう時間、すきに使えるんだったら、どこかの泉のほうへ、ゆっくり
  歩いてゆくんだがなあ〉と、王子さまは思いました。  



ネットやメール、ツイッターなどで、瞬時に情報がやり取りできる現代では
「時間がかかる」ことが罪悪のように言われがちですが、
「時間」を楽しめない暮らしは、豊かではないのではないでしょうか。

ミヒャエル・エンデの「モモ」の中に、時間泥棒というキャラクターがでてきます。
現代の私たちは、日々たくさんの時間を盗まれてしまっているのかもしれません。