仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「清水義範本人の愛好本」 清水義範

1991年に出た、作者による自選短編集です。20作収録
 
清水義範、試しに一冊読んでみようか、という方にお勧め。
さすが自選集だけあって、おもしろい作品が集まっています。
 
あとがきでは作者が各作品について解説しています。
 
 
 
 「蕎麦ときしめん
 
とある人が書いた名古屋文化論という設定。
作者は名古屋出身なのでリアリティがありそうで、よけいおもしろいです。
一時期、名古屋がブームになりましたね。
 
 地方都市の中で、たとえば横浜は東京に対して優越感を持っている。大阪は何の根拠もなく、東京と対等だと
 思っている。実際には文化的な側面で大阪は東京にくらべてかなりレベルが低いのだが、大阪人は、文化はな んぼのもんや、文化でめしが食えんのか、と思っているから劣等感を感じないのである。そしてそれ以外の地  方都市はすべて東京に対して劣等感を持っている。ところが名古屋人だけは、優越感と劣等感の両方を持って いるのである。だから名古屋人の態度は変なのである。
この文章、気を悪くする方もおられるでしょうけど、私は一理ある気がします。
大阪は外国かと思うくらい文化が違う!(笑)
 
 
 「猿蟹の賦(サルカニノフ)」
 
作者の看板であるパスティーシュ小説の第一作。
昔話の「猿カニ合戦」を司馬遼太郎風に語ってみたというもの。
笑い話をシリアスに語っているようでミョーにおかしいです。
司馬作品を知っている人ほど笑えると思います。
 
 
 
 「偏向放送」
 
露骨に日本をひいきしたマラソン実況中継。
なんのかんのいって、スポーツ報道は「日本がメダルをとるか」という点にだけ偏向してますよね。
 
 
 
 「国語入試問題必勝法」
 
作者の出世作です。
入試の現代国語の長文読解問題の意義に疑問を感じたことのある人は多いと思います。
そこを思いっきり皮肉ってますね~。
 
 
 
 インパクトの瞬間」
 
テレビCMの訳のわからない宣伝文句をパロディにしています。
といいつつ、そのフレーズが頭に残ってその商品を買っちゃうのは
販売者の術中にはまっちゃってますね。
 
 
 
 「○○についてどう思いますか
 
ニュース番組でよくある街頭インタビュー(道ばたで通りすがりの人にコメントを求める)の内幕。
インタビューといいつつ、テレビ局の求める内容に編集されてしまうものだということを描いています。
知人が実際にインタビューされたことがありますが、放映をみたら都合の良い部分だけ編集して流していた
そうです。
 [作者 あとがき]より
  これを読んでしまったからには、あなたは今後テレビの中で言ってることを、疑ってかからなければならない。
 
 
 
 
 「永遠のジャック&ベティ」
 
昔の英語の教科書の登場人物のジャックとベティが、30年後再会して交わした会話。
この教科書を使って勉強された方にはすごく笑えると思います。
 
 
 
 「ドラマチック・ファミリー」
 
読んでいると、この場面はあのドラマだなーとわかります。
 
[作者 あとがき]より
 テレビ・ドラマというものの、ごちゃまぜパロディーのつもりの作品である。それなのに、これが発表されるとす  ぐ、あるテレビ番組製作プロダクションからが電話かかってきて、久しぶりにドラマらしいドラマで感心しました、 ドラマ化を考えさせて下さい、と言ってきたのは何としたことであろうか。世の中にはいろんな人がいるので    ある。
   これって本当の話?と思いました。このエピソード自体がまた一つのパロディですね