仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「モルグ街の殺人事件」 エドガー・アラン・ポー [アメリカ]

新潮文庫、短編5編収録です。
 
 
 「モルグ街の殺人事件」
 
推理小説の始まりの作品、
元祖探偵オーギュスト・デュパン氏が登場します。
 
デュパン氏の論理的な推理の過程を読んでいると
なるほど、シャーロック・ホームズの先祖なんだな~ということがよく分かります。
捜査をして証拠を探したりという実働はなく、頭の中で推理を組み立て犯人を捜すタイプです。
 
ホームズシリーズに比べて広く読まれていないのは
エンターテイメント性が低いのと、文章が暗くてくどいからでしょうか。
まあ、ポーにエンターテイメントを求める方が間違っていると思いますが。
 
 
 
 「盗まれた手紙」
 
ポーにしては珍しく(笑)、殺人も恐怖も残酷も出てこない作品です。
政治家同士の抗争にまつわる事件で、
盗まれた手紙を犯人の手からいかにして取り戻すかというのが課題です。
デュパンは完全にその頭脳の力だけで、手紙を取り戻します。
高度な知的ゲームといった展開で、鮮やかです。
 
デュパンものを試しに一つ、という方にお勧めの作品です。
 
 
 
 「落穴と振り子」
 
十二世紀からヨーロッパで始まった宗教裁判の刑罰の、死に至るまでの拷問を描いた話。
男は密室に閉じこめられ、外から見張っている裁判者によってあの手この手の拷問を受けます。
暗い部屋の中の落とし穴、身動きできない状態で天上から少しずつ振り子のように下りてくる大きな刃、
火責め、部屋の壁が移動し迫ってくる圧力。
その経過をこと細かく描写し、彼の心理状態を冷静な文章で表現しています。
最後に彼は間一髪の所で助けられます。
 
こういう題材を選び、それを書くことが出来てしまうポーは、実におそろしい人物です。