「素晴らしき家族旅行」 林真理子
お茶の間ホームドラマといった感じの家族小説
菊池忠紘は妻幸子と息子・娘と共に両親の家で暮らすことになった。忠紘の寝たきりの祖母淑子を
介護するためだ。忠紘の父保文の他、二人の子供がいるのにも関わらず、孫夫婦が介護する
ことになったのには、ややこしい事情があった。
最初に菊池家の家系図が載っています。親戚三代の人間関係がからみあうので
祖母淑子と長男保文の妻房枝との折り合いが悪いため、保文の長男忠紘の嫁幸子に
介護が回ってきます。房枝と幸子の折り合いも悪いのですが。
嫁姑の争いに加え、遺産相続のもめ事もからみ
人間関係がかなりややこしいです。
にもかかわらず、あまりどろどろした展開にはならず
からっと明るい雰囲気の小説です。
それはお嫁さんの幸子さんのキャラクターによるところが大きいです。
明るく情が深く面倒見のよい彼女は、厄介ごとでも頼られれば引き受けてしまう
肝っ玉母さんです。
それから、そんな妻にベタ惚れなお人好しの亭主忠紘もいいですね。
幸子は12歳上で、忠紘が出会った時には夫と娘がいました。
苦難を乗り越えて結ばれた二人は10年たってもラブラブです。
介護、遺産問題に加え、忠紘の妹久美子の結婚問題も起こり、
とうとう温厚な忠紘が両親妹にキレて、絶縁を宣言し出て行きます。
しかし、祖父高一郎の急な死により、縁を切ったはずの関係が
なんとなく修復されます。
遺産争いの裁判が実現しそうな中、親族が一同に介しての墓参りが
なごやかに行われます。
幸子はさいごに言います。
「
でもいいよ、いいよ。死ぬまで喧嘩出来るわけじゃなし。憎み合っていがみ合って、
そして許し合うのが家族だもんね」