松尾芭蕉 「おくのほそ道」 [江戸]
東北~北陸の旅の様子を俳句を取りまぜて記している文章です。
冒頭の文が有名です。
月日は 百代 ( はくたい ) の 過客 ( くわかく ) にして、行きかふ年も 又 ( また ) 旅人なり。
舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて 老 ( おい ) をむかふる物は、日々旅にして旅を
栖 ( すみか ) とす。
最初の章で、旅に出ずにはいられなくなった心境を語っています。
おくのほそ道の旅は、
東京を出発して北上し、仙台・石巻まで行き
海岸づたいに北陸を西下して岐阜の大垣までたどりつく、というもの。
初老の身で全て徒歩で旅したのですから
すごいです。まさに命がけ。
芭蕉は各地の歌枕(古来、和歌に詠み込まれてきた名所)を見て回ってます。
こんな旅ができたら素敵だなあ。(徒歩はムリだけど)
芭蕉の句は好きなものがいくつもあります。(「おくのほそ道」以外にも)
五月雨の 降り残してや 光堂
さみだれ ひかりどう
平泉の中尊寺の光堂を読んでいます。
暑き日を 海に入れたり 最上川
もがみがわ
「ジュ」という音が聞こえてきそうですね。
梅が香に のっと日の出る 山路かな
か
梅の香りと「のっと」出る朝日の姿の対比が好きです。
鶯や 餅に糞する 縁の先
うぐいす もち ふん
意味は「そのまんま」です。風流もへったくれもないことをわざわざ
句に詠んだ所がツボ。
山路来て 何やらゆかし 菫草
古池や 蛙飛びこむ 水の音
すみれぐさ
「なんか、いい」って気持ち、ありますよね。
かわず
この句を英訳する時、蛙は一匹なのか、複数なのかが問題になった
そうです。みなさまは何匹だと想像されますか?
ほろほろと 山吹散るか 滝の音
やまぶき
山吹の花房は繊細で、いかにも滝の轟音に誘われて散りゆきそうです。
滝壺に吸い込まれるように落ちていく川の音、
鮮やかな黄金色の繊細な花びらと砕け散る水しぶき。
美しいなあ・・・。
秋深き 隣は何を する人ぞ
物いへば 唇寒し 秋の風
芭蕉作と知らなくても、見たことがある句ですよね。
人生訓っぽいです。
一番好きなのは、辞世の句です。
辞世の句は、自身の死を前にして詠む、人生最後の句(歌)。
歴史上のさまざまな人物が遺しています。