仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

#俳句、川柳

十二月の句  ‘与謝蕪村の俳句より‘

鍋さげて 淀の小橋を 雪の人 木枯しに あぎとふかるるや 鉤の魚 居眠りて 我にかくれん 冬ごもり 暮れまだき 星のかかやく かれの哉 こがらしや 鐘に小石を 吹き当てる 霜あれて 韮を刈り取る 翁かな 松明ふりて 舟橋わたる 夜の霜 故郷に 一夜は更くる ふと…

十一月の句    ‘与謝蕪村の俳句より‘

手燭して 色失へる 黄菊かな 冬ちかし 時雨の雲も ここよりぞ 待人の 足音遠き 落葉哉 葱買て 枯れ木の中を 帰りけり こがらしや 鐘に小石を 吹き当てる 秋去りて いく日になりぬ 枯れ尾花 ひとり来て 一人を訪ふや 秋のくれ 山暮れて 紅葉の朱を 奪ひけり …

十月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

白萩を 春わかち取る ちぎり哉 中中に ひとりあればぞ 月を友 山の端や 海を離るる 月も今 地下がりに 暮れ行く野辺の 薄哉 うつくしや 野分の後の とうがらし 紀の路にも おりず夜を行く 雁一つ 花守は 野守に劣る けふの月 月見れば なみだに砕く 千々の玉…

9月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

秋来ぬと 合点させたる 嚔かな 子狐の 何にむせけむ 小萩はら 錦する 秋の野末の 案山子哉 梨の園に 人たたずめり 宵の月 月天心 貧しき町を 通りけり 秋雨や 水底の草を 踏みわたる 足もとの 秋の朧や 萩の花 白露や 茨のはりに ひとつづつ 茨野や 夜はうつ…

八月の句     ‘与謝蕪村の俳句より’

掴みとりて 心の闇の ほたる哉 昼がほや すみれの後の ゆかしさよ すずしさを あつめて四つの 山おろし 涼しさや かしこき人の 歩行渉り 我が影を 浅瀬に踏みて すずみかな みな底の 草にこがるる ほたる哉 眉ばかり 出して昼寝の うちわかな 蝉も寝る 頃や…

七月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

明けやすき 夜や稲妻の 鞘走り 戚として 客の絶え間の ぼたん哉 みじか夜の 闇より出でて 大堰川 夕風や 青鷺の 脛をうつ 目にうれし 恋君の扇 真白なる 花いばら 故郷の路に 似たるかな 夜水とる 里人の声や 夏の月 蚊帳つりて 翠微作らん 家の内 夏山や 通…

六月の句    ‘与謝蕪村の俳句より’

さみだれや 名もなき川の おそろしき 花いばら 故郷の路に 似たるかな ででむしの 住はてし宿や うつせ貝 ほととぎす 待ちや都の そらだのめ 更衣 母なん藤原 氏也けり 白がねの 花さく井出の 垣根哉 おちこちに 瀧の音聞く 若葉かな こもり居て 雨うたがふ…

五月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

広庭の ぼたんや 天の一方に 若葉して 水白く麦 黄ばみたり 地車の とどろとひびく ぼたんかな 寂として 客の絶え間の ぼたん哉 花いばら 故郷の道に 似たるかな 粽解きて 蘆ふく風の 音聞かん 稲葉殿の 御茶たぶ夜や 時鳥 実ざくらや 立ちよる僧も なかりけ…

四月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

たんぼぼ花咲り 三々五々 五々は黄に 花の春 誰ぞやさくらの 春と呼ぶ 我が宿の うぐひす聞む 野に出て 鶯の啼くや 小さき 口明いて 春風や 堤長うして 家遠し 春草路 三叉に 小径あり 我を迎ふ 春の夜や 宵あけぼのの 其の中に よき人を 宿す小家や おぼろ…

三月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

菜の花や 月は東に 日は西に 衣手は 露の光りや 紙雛 鶯を 雀かと見し それも春 鶯に ひねもす遠し 畑の人 みの虫の 古巣に添ふて 梅二輪 しら梅や 北野〃茶店に すまひ取り 宿の梅 折取るほどに なりにけり つぼみとは なれもしらずよ 蕗の薹 のふれんに 東…

二月の句  ‘与謝蕪村の俳句より’

易水に ねぶか流るる 寒さ哉 大雪と 成りけり関の 戸ざしごろ 古池に 草履沈みて みぞれかな 町はづれ いでや頭巾は 小風呂敷 埋み火や 春に減りゆく 夜やいくつ 寒梅や ほくちにうつる 二三輪 しら梅の かれ木に戻る 月夜哉 沓おとす 音のみ雨の 椿かな 埋…

一月の句   ‘与謝蕪村の俳句より’

我門や 松はふた木を 三の朝 古庭に 鶯啼きぬ 日もすがら 腰ぬけの 妻うつくしき 炬燵哉 冬ごもり 燈下に書すと 書かれたり 冬ごもり 妻にも子に かくれん坊 易水に 葱流るる 寒さ哉 町はづれ いでや頭巾は 小風呂敷 埋火や 物そこなはぬ 比丘比丘尼 埋火や …

十二月の句   ‘松尾芭蕉の俳句より’

みな出て 橋をいただく 霜路哉 寒けれど 二人寝る夜ぞ 頼もしき ねぶか白く 洗ひたてたる さむさ哉 木枯らしに 岩吹きとがる 杉間かな たふとがる 涙やそめて ちる紅葉 花皆枯れて 哀れをこぼす 草の種 旅に病んで 夢は枯れ野を かけめぐる たび寝よし 宿は…

十一月の句   ‘松尾芭蕉の俳句より’

色付くや 豆腐に落ちて 薄紅葉 木の葉散る 桜は軽し 檜笠 里ふりて 柿の木もたぬ 家もなし 手にとらば 消えんなみだぞ あつき秋の霜 枯れ枝に 烏のとまりたるや 秋の暮れ 蛤の ふたみにわかれ 行く秋ぞ こちらむけ 我もさびしき 秋の暮れ 此の道や 行く人な…

十月の句   ‘松尾芭蕉の俳句より’

草いろいろ おのおの花の 手柄かな ひょろひょろと 尚露けしや をみなへし 一つ家に 遊女もねたり 萩と月 しら露も こぼさぬ萩の うねり哉 芭蕉葉を 柱にかけん 庵の月 蜻蛉や とりつきかねし 草の上 朝な朝な 手習すすむ きりぎりす 月清し 遊行のもてる 砂…

九月の句   ‘松尾芭蕉の俳句より’

秋ちかき 心の寄りや 四畳半 秋来にけり 耳をたづねて 枕の風 はつ秋や 海も青田の 一みどり 牛部やに 蚊の声闇き 残暑哉 東にし あはれさひとつ 秋の風 見送りの うしろや寂し 秋の風 あかゝゝと 日はつれなくも あきの風 桃の木の 其葉ちらすな 秋の風 秋…

八月の句   ‘松尾芭蕉の俳句より’

閑さや 岩にしみ入る 蝉の声 撞鐘も ひびくやうなり 蝉の声 面白て やがてかなしき 鵜ぶね哉 暑き日を 海にいれたり 最上川 汗の香に 衣ふるはん 行者堂 たのしさや 青田に涼む 水の音 南もほとけ 草のうてなも 涼しけれ 松風の 落ち葉か水の 音涼し 夕晴れ…

七月の句   ‘松尾芭蕉の俳句より’

みな月は ふくべうやみの 暑さかな 暑き日を 海にいれたり 最上川 百里来たり ほどは雲井の 下涼み たのしさや 青田に涼む 水の音 松風の 落ち葉か水の 音涼し 己が火を 木々の蛍や 花の宿 うら見せて 涼しき滝の 心哉 松すぎを ほめてや風の かほる音

六月の句  ‘松尾芭蕉の俳句より’

田一枚 植て立ち去る 柳かな 五月雨に 鶴の足 みじかくなれり さみだれは 滝降りうづむ みかさ哉 五月雨の 降りのこしてや 光堂 五月雨を あつめて早し 最上川 さみだれの 空吹きおとせ 大井川 かたつぶり 角ふりわけよ 須磨明石 草の葉を 落るより飛ぶ 蛍哉…

五月の句    ‘松尾芭蕉の俳句より’

くたびれて 宿かるころや 藤の花 独あま 藁屋すげなし 白つゝじ 行春や 鳥啼き魚の 目は泪 入かゝる 日も程々に 春のくれ 一つぬひで 後ろに負ひぬ 衣がへ 岩躑躅 染る涙や ほとゝき朱 しばしまも まつやほとゝぎす 千年 若葉して 御めの雫 ぬぐはゞや あら…

四月の句    ‘松尾芭蕉の俳句より’

春風に 吹き出し笑ふ 花も哉 咲き乱す 桃の中より 初桜 やまざくら 瓦ふくもの 先づふたつ 目の星や 花をねがひの 糸桜 さまざまの 事おもひ出す 桜哉 よし野にて さくら見せふぞ 檜の木笠 くさまくら まことの華見 しても来よ 花見にと さす舟遅し 柳原 樫…

三月の句    ‘松尾芭蕉の俳句’

笠寺や もらぬいはやも 春の雨 春雨の こしたにつたふ 清水哉 春雨や 蓬をのばす 草の道 畑打つ 音やあらしの さくら麻 ひばりなく 中の拍子や 雉子の声 でふの羽の 幾度越ゆる 塀のやね 古池や 蛙飛びこむ 水の音 雪間より 薄紫の 芽独活哉 草の戸も 住み替…

二月の句   ‘松尾芭蕉の俳句’

盛りなる梅にす手引く風も哉 我も神のひさうやあふぐ梅の花 此の梅に牛も初音と鳴きつべし 梅柳さぞ若衆哉女かな 旅がらす古巣はむめに成りにけり 初春先づ酒に梅売るにほひかな 世にゝほへ梅花一枝のみそさゝ“い 梅白し昨日ふや鶴を盗まれし るすにきて梅さ…

「芭蕉全句集」  松尾芭蕉    [角川ソフィア文庫]

古典作品を収録している文庫は何社かあります。 代表格はやっぱり岩波文庫。 まずはここの棚を探します。 原文に近い形で本になっていて 格調高く、信頼感があります。 しかし、 原文をそのまま収録しているということは 説明がないということ。 歌集なら何…

一月の句    ‘松尾芭蕉の俳句より’

天秤や京江戸かけて千代の春 庭訓の往来誰が文庫より今朝の春 かびたんもつくばはせけり君が春 発句也松尾桃青宿の春 ああ春々大ナル哉春と云々 元日やおもへばさびし秋の暮れ はる立や新年ふるき米五升 誰やらが形に似たりけさの春 二日にもぬかりはせじな…

「俳句の本 光と風と水と」  川名大・山下一海  [朝日出版社]

いろいろな俳句を紹介しているアンソロジー 春、夏、秋、冬、新年の5章立てです。 風景写真を挿し絵のように載せていて、俳句をイメージしやすいです。 時々ちょこっと載っている歴史コラムが興味をひきます。 俳諧、連歌から始まって現代の前衛俳句まで、…

「山頭火 漂白の跡を歩く」   [JTBキャンブックス]

自由律俳句で有名な 種田山頭火 の人生と俳句を紹介した本です。 JTBの本なので、旅行ガイド的です。 自由律俳句は、山頭火と尾崎放哉が有名ですが、 規格外のもので名をなしただけあって、両人とも満たされない人生の 人だったようです。 山頭火は地方の名…

松尾芭蕉 「おくのほそ道」  [江戸]

もっとも有名な俳人の一人 松尾芭蕉の 俳諧紀行文 東北~北陸の旅の様子を俳句を取りまぜて記している文章です。 冒頭の文が有名です。 月日は 百代 ( はくたい ) の 過客 ( くわかく ) にして、行きかふ年も 又 ( また ) 旅人なり。 舟の上に生涯をう…