仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

『子供なんか大キライ!』  井上きみどり  [集英社]

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赤裸々育児エッセイ漫画
集英社漫画文庫 全9巻
 
番外編(続編) 「小1タイム」全1巻  「嫁タイム」全2巻
裏話エッセイ 「子供なんか大キライ!番外編 -キライの裏側-」   も出ています。
 
 
育児マンガというと、奮闘するお母さんが失敗しつつも愛情いっぱいに子供を育てていく
というほのぼのしたイメージがありますが、
この作品は全然違います。
タイトルからして型破りですが、そのまんま作者は子供好きではない女性です。
 
 
10年続いたこのマンガ、スタートは
漫画家の妻きみどりと予備校講師の夫ひーちゃんが出来ちゃった婚をする所からです。
母性的でも家庭的でもない作者きみどりは、生まれてきた長女ポチ(あだ名です)をもてあましつつ
なんとかつきあっていきます。
(愛情過多で家庭的な夫ひーちゃんの努力で、家庭は支えられています。)
 
よくもまあ、こんなに自慢できない家庭生活を公表するなあという内容です。
「母親失格」の烙印を押されること間違いなし、という生活ぶりです。
母きみどりの子供に対する態度は「この人、生育歴に問題があったのでは?」と思わされますが
実際そうだったことがマンガに描かれています。
両親はいわゆるヤンキー(太陽族?)夫婦で、
きみどりと姉は幼いころは父の実家に預けられており
両親に引き取られた後もネグレクトに近い育てられ方をされていたようです。
 
そんな母きみどりに育てられるポチの成長ぶりも順調ではありません。
保育園での集団不適応などに悩みながら、きみどりは仕事と育児を続けています。
長女ポチが5歳の時、次女のケロが生まれます。
姉妹はそれぞれ違った個性を持ったユニークな娘たちです。
子供の成長にともなってさまざまなトラブルが起きます。
きみどりは文句たれまくってストレス太りしながらも、
体当たりで問題に立ち向かっていきます。
 
 
 
ポチ10歳、ケロ5歳の時に連載は終了します。
1巻から振り返ると、母きみどりと、きみどり家の成長ぶりが感じられて
しみじみします。
 
この作品がいいなと思うのは
自分のトラウマをさらけだすような率直な内容と
それでありながら、少しもじめじめしていないカラッとした描き方です。
 深刻な問題が発生することがあっても、自分を哀れんでメソメソ閉じこもることはなく
前向きに対処しようとがんばる姿をユーモラスに描いています。
 
「子供には愛情をもって接することが大切」なのは当たり前なのですが
実際にはそれが自然にできる人とできない人がいる訳です。
「できない」自分を自ら公表することは難しいことで、
そこにこの作品の価値があるのだと思います。