「延長戦に入りました」 奥田英朗 [幻冬舎]
奥田英朗のスポーツ・エッセイ集
奥田氏のエッセイですから、スポーツ物といっても
さわやかな感動を語るような内容ではなく
スポーツ観戦や参加にまつわるエピソードをななめから語ったお笑いネタ。
筆者の毒舌全開って感じです。
筆者の日常生活における優れた観察眼が発揮された話が
多いです。
たとえば、東京ドームの野球中継をテレビで観ているとき、バックネット裏の観客の行動が
気になって仕方がないとか。
またボクシングのタイトルマッチでは、リングサイド席にいつも座るパンチパーマの紳士がいるとか。
すごいのはそんなレアなネタに対して、ちゃんと読者から反応が返ってくる所ですね。
一般人とはものを見る視点が違っていることがよくわかります。
各話のタイトルを見ただけでも面白いです。
・レスリングのタイツはなぜ乳首をだすのか。
・スポーツのがに股と女子選手の葛藤
・タイガー・ウッズと大顔の悲哀
・ボブスレーの前から二番目の選手は何をする人なのか?
印象に残った話は「アメリカ男の災難と家族信仰」です。
日本を、組織に対しての忠誠心が常に問われる「組織信仰型社会」と呼び、それに対して
アメリカを、家族に対しての忠誠心が常に問われる「家族信仰型社会」と呼んで論じています。
「男は常に、いかにじぶんが家族を大切にしているかを周囲にアピールし続けなくてはならないのが
「ところがそれでアメリカは家庭円満かというと、どっこい世界有数の離婚率を誇る国なのだからわけがわからな い」
俳優のシルベスタ・スタローンが結婚したとき、「もし離婚したときは慰謝料いくら」という契約書を
取り交わしたそうです。
日本に生まれてよかったな~としみじみ思う私であります。