仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「カッコウの卵は誰のもの」 東野圭吾  [光文社]

スキー選手の父娘の血縁関係をテーマとしたミステリー
 
 主人公緋田宏昌は元スキーのオリンピック選手
 18歳の娘の風美もスキー選手として将来を嘱望されている。
 父娘の才能の遺伝を研究させてほしいという依頼を
 緋田は拒絶する。それには重大な理由があった。
 風美は緋田の妻が誘拐した赤ん坊であり、緋田とは血のつながりはなかったのだった。
 
 
風美の出生の秘密、脅迫状、傷害事件など
いくつかの軸がからみつつストーリーは進んでいきます。
そしてラストには東野作品らしいどんでん返しが待っています。
 
 
物語としてのテーマは
・自分の意志に反していても、生まれ持った才能を活かすことが当人の幸せなのか?
・親子にとっての血のつながりの重要性
といったところかと思います。
 
才能論については、自分の意志がなければ、いくら才能があったとしても真に活かすことは
できないと私は思います。
人間を最終的に動かすのは理屈ではなく、感情だからです。
ビジネスの場においてさえ、つまるところ好き嫌いで決断されることが多いような気がします。
 
緋田は、娘に出生の秘密を打ち明けるかどうか苦悩しますが
「人間として正しい道を選ぶ」と打ち明けることを決断します。
実に正々堂々とした態度です。
 
本当に作者東野氏は人が変わりましたよね~。
初期の頃の人間不信の塊みたいな作風とは別人みたいに
性善説の人になっちゃいましたね~。いいことです。