仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「源氏物語の色辞典」 吉岡幸雄  [紫紅社]

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源氏物語に登場する衣装を、プロの染織家が再現した写真集
 
可能な限り、当時と同じ原料を使って製作したそうなので
本物の雰囲気が楽しめます。
平安期の色目が載っている色辞典はよくありますが、布地や染料が今のものだと
イメージが違ってしまいます。
 
源氏物語には衣装の描写がよく出てきますが、知識がないので想像が難しいです。
かといって、図鑑のようなものを調べながら読むのも興ざめです。
この本は物語の世界を衣装によって再現していて、すばらしいです。
 
予想以上に衣装が人物描写や物語の主題に関わっていることがわかりました。
源氏を深く理解するためには文化風俗の知識は必須ですね。
衣装だけでなく、お香や和歌、書などいろいろ。
やっぱり奥が深いなあ。
 
 

 
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「桐壺」の段
右が桐の襲、左が藤の襲
 
桐壺は源氏の母、藤壺は最愛の桐壺の身代わりに父帝が妻にした女性で、源氏との間の子供を産む
藤壺は桐壺にそっくりという設定。
 
実は桐と藤の花は色合いはそっくりでした。
桐は地味で藤は華やかだけど。
襲の色目もよく似ています。
名前そのものが二人のキャラクターを暗示していたんですね~。
 

 
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澪標の段
官位の色を再現しています。
当時の宮中の役人は九つの位に分かれていて位ごとに
着る衣服の色が決まっています。
 
一目でお互いの官位がわかってしまうんですね、シビア~。
源氏の息子 夕霧は低い官位でスタートしたので、服の色をバカにされていました。

 
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絵合の段
源氏の息子 冷泉帝の二人の女御(源氏の養女と頭中将の娘)が
絵合(絵比べの勝負)をする話
 
源氏方は右側の赤系の衣装、中将方は左側の黄、緑系の衣装を着ていました。
真ん中は審判役の帝の衣装
 
まるで花園のような情景ですね。
雅だわあ。
 
貴族の姫君は、自分の衣装はもちろんのこと、女房たち(使用人)の衣装にも
趣味の高さが表れることになっていたようです。
 
 
 
 
 
源氏物語で衣装が印象に残る章といえば「玉かずら」の「衣配り」の場面。
源氏が女たちのためにお正月の衣装を選ぶくだりです。
 
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            紫の上                         明石の方
         なるほど華やかな組み合わせ             高雅で品が高い
 

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               明石の姫                        花散里
             少女らしくかわいい                 穏やかで落ち着いた色合わせ
        赤と白を重ねてピンクにする組み合わせ
 
 
 

 
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いろいろな襲の色目が紹介されています。
「襲」は少しずつ布をずらして重ねる場合と
布をぴったり重ね合わせて違う色を表現する場合があるそうです。