仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「和菓子のアン」   坂木司   [光文社]

和菓子屋に勤める女の子を主人公にしたライトミステリー
同僚やお客さんにまつわるちょっとした謎が解かれます。
5編収録の連作短編集
 
主人公 梅本杏子(きょうこ、あだ名=アン)は高校卒業したての女の子。
将来への展望がないまま、進路未定で卒業してしまい
とにかく働こうと、デパ地下の和菓子店でバイトをすることに決める。
 
 
和菓子店だから茶道に関わるエピソードも多く
楽しんで読めました。
今時の若者の姿が‘等身大’で描かれている感じで
ほほえましくなりました。
 
 
彼女は身長150cm、体重57kg。
体型に合ったお人好し系の顔で、
性格も見た目と同様な地味なタイプ。
 
自分の「キャラ」を自覚し、それに反する行動はとらないように心がけ
人との会話の中で傷つくことがあっても、顔には出さず
場の空気を壊さないように笑いをとってみせたり。
周囲への気の遣いようがけなげです。
この気遣いは現代を生きる若者には必須アイテムなんでしょうね。
 
自分の容貌へのコンプレックスは、いかにもお年頃の女子。
さらに何十年もたてば、いちいち気にしなくなるんだけどね(笑)
 
 
 
彼女は、初めて社会に出て働くという経験を通して
いろいろなことを感じていきます。
「社会の慣例」をするっと飲み込めず反発を感じるアンちゃんの姿に
若かりしころ自分を思い出し、甘酸っぱい気持ちになりました。
 
すっぴんで出勤した日、店長に「お客さまに対しての礼儀として最低限のメイクはするように」
と言われます。
納得できず「女ってだけで、お化粧する義務があるのかなあ」とつぶやくアンちゃん。
私も昔はそんなこと思いましたね~。
今は「義務じゃなくて権利だ」と思うし、
もはや「信念」とかあるべき「筋」とかにこだわらなくもなっちゃったし
 
 
食品偽装という社会の本音と建て前に直面する事件もあるし
これから社会にでる若者に読んでもらうとためになりそうです。