仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

『月の輝く夜に』  原作:氷室冴子 作画:山内直美  [白泉社]

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少女小説で一世を風靡した故 氷室冴子さんの単行本未収録の遺作を
漫画化したもの。
 
まだ未収録の作品があったのかと驚きましたが
内容を見て納得。
 
少女小説」には不向きですねえ。
登場人物すべてが不幸な恋愛小説なんて
およそ「少女」向けではないです
 
元少女の私には、そこがよかったです。
「一応読んどくか」くらいのつもりだったけど
引き込まれました。
 
 
 
 
 
主人公 貴志子は裕福な平安貴族の一人娘
若くして両親を亡くしたが、生活に不自由はない。
 
年の離れた恋人 有実は切れ者の大納言。
美しい5歳上のいとこ 葛野が居候している。
 
 
物語は恋人 有実が貴志子に、
自分の娘 晃子をしばらく預かってくれ
と言う所から始まります。
 

                     貴志子
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                                      晃子

 
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                              弾正の宮
                            イケメン・セレブ
                           この物語のキーパーソン                            
 
 
 
何人かの男女が入り組んだ愛憎関係を作っています。
清く正しく満ち足りた恋愛関係が一つもない所がすごい。
 
悪い男の弾正の宮のバックグラウンドがしっかり描かれている所が
物語に深みと説得力を与えています。
 
 
 
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一番印象に残ったシーンは 物わかりのよい穏やかなオジサマだった有実が
初めて貴志子に嫉妬心をあらわにする所。
首絞めちゃいますから、こわい。
 
時の権力者の懐刀で、酸いも甘いも噛み分けた彼が
なぜ、美形でもなく愛嬌もない小娘 貴志子にそこまではまったかが
謎ですが、そこが恋というものかな。
 
現実を直視せず、ぼんやり流されているだけのつもりだった貴志子が
自分の罪を自覚した所は
悲しみよこんにちは」のセシルを思い出しました。
 
 
 諸行無常的な主題も意識しているようで
古典文学の伝統を正しくふまえているといえるでしょうか。
 
 
 
元少女漫画・小説ファンだった
女性の方々にお勧めする佳作です。
 
原作の小説も出版されるそうです。