仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「ファッション-蝶は国境をこえる-」  森英恵  [岩波新書]

ファッションデザイナーの森英恵(モリハナエ)さんが書いた半生記
 
 
日本のデザイナーの先駆けでいらっしゃるのは知っていましたが
東洋人初のパリ・オートクチュール組合加入デザイナーだったなど
文字通り、第一人者だったんですね。
 
今ではパリやミラノのコレクションに参加する日本人デザイナーなんて
珍しくないですが、
戦後数十年のころとしては偉業ですよね。
 
オリンピック選手のユニフォーム、インド・中国での製作など
初の試みにいろいろと携わっておられるそうです。
 
 
 
森さんが仕事を始めたのは結婚後のこと。
洋裁学校に通って、学校仲間と洋裁店を始めたのが振り出し。
映画全盛期のこのころ、大スターの衣装をたくさん作ったそうです。
 
勤め人だったご主人は、お店が発展していくのに合わせて
会社をやめ、経営に入ったそうです。
そこで夫婦の役割分担ができて、事業がうまく進んでいったようです。
当時としては妻の事業のサポート役に進んでなる男性は
進歩的だったのでしょうね。
うらやましいご夫婦。
 
 
 
 
世界を相手に事業を発展させていくそれぞれの過程での
森さんの心境がつづられています。
 
一番印象的なのは生い立ちのこと。
島根の小さな町出身の森さんは
自然豊かな環境で幼少期を過ごしたそうで
それが「すごく貴重なことだ」と語っています。
トレードマークの蝶もそれが由縁だそうです。
 
自然豊かな生育環境、愛情豊かで教育熱心なご両親、
それが世界のモリハナエの土台となったのだと感じました。
 
 
 
 
 
 
最近、ファッション関係者の書いたエッセイ、啓蒙本をいろいろ読んでいます。
筆者の地位の高さと、本の内容の深さは
おおむね比例しているものだと感じています。
 
物の考え方は人それぞれですが
まずは話を傾聴してみようと思わせる重みがないと
読み続ける気がなくなります。
 
どんな分野でも第一人者と呼ばれる人は
仕事への姿勢や思想に学ぶべきものを持っていて
それは人間的バックボーンから生まれているものなのでしょうね。