「歪笑小説」 東野圭吾 [集英社文庫]
「怪笑小説」「毒笑小説」に続く、ブラックユーモア短編集シリーズ 第4弾
今回は小説・出版業界のパロディという自虐的な内容になっています。
12編収録で、
・「伝説の男」 売れる作家の原稿を取るためなら、どんなことでもする編集者
・「小説誌」 小説雑誌の存在意義を暴露
・「序の口」 作家間のヒエラルキー
・[引退発表」 純朴とおもいきや、したたかな作家の本性
・「職業、小説家」 小説家(自由業)と結婚しようとする娘の父の心境
などなど。
とてもリアルなエピソードばかりで
「どこまで実状に基づいているんだろう??」と気になってしまいます。
愛書家のみなさんなら、出版業界についても興味があると思うので
楽しめると思います。
印象に残ったエピソードは「小説誌」
以前ふと小説雑誌ってどういう人が買うんだろうと思ったことがあります。
私だったら長編小説を細切れに読むなんてイライラしちゃって
できないので、完成して本になってから読みます。
好きな作家以外の小説には興味ないし。
その疑問に率直な解答をもらえて苦笑しました。
それから、売れ筋の本ばかり置くことによって
本の売り上げを減らす図書館への批判もちらりとされていました。
ブックオフネタはなかったな。
きっと入れたいとは思ったでしょうけど、うまく織り込めなかったのでしょう。
全編を通して、作者が小説、出版業界に対して抱く
アンビヴァレンツな感情が読み取れます。
もともとの東野氏の持ち味の一つは、こういう屈折したこだわりだと
思います。
いつまでもこれをなくさないでほしいと、
売れ線を狙った薄利多売な感じの作品が増えた
最近に思います。
でもな~、
この本を読んだ後だと
売り上げ重視にならざるをえないのが
業界の実状かな、とも思います。